研究課題/領域番号 |
20K16103
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮崎 啓史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90803867)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 肝マクロファージ / 肝線維化 / 脂肪酸結合蛋白質 |
研究実績の概要 |
本研究では、肝マクロファージ(Kupffer細胞、KC)の細胞内脂質代謝調節による活性化制御メカニズムの解明と、KCと隣接細胞との構造的・機能的連関、およびその細胞連関による肝恒常性や肝疾患病態への影響の解析を進めてきた。細胞内脂肪酸の生理機能を調節すると考えられる脂肪酸結合蛋白質FABP7はKCに強く発現し、KCの機能制御に関わると考えられる。令和3年度では肝線維化過程におけるKCのFABP7の機能的意義について検討を行ってきた。 FABP7遺伝子欠損マウスは野生型マウスと比較して、肝線維化程度が低下した。線維化肝から肝マクロファージを単離し、遺伝子発現解析を行ったところ、マクロファージの抗炎症性機能を示す遺伝子発現が、FABP7遺伝子欠損マウスで低下しており、それらの遺伝子発現低下が肝線維化程度の低下と関連する可能性が示唆された。さらに、FABP7遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスの骨髄細胞から分化させたマクロファージ(BMDM)を抗炎症性機能へと活性化させ、線維芽細胞との共培養を行った。線維芽細胞由来の線維化促進因子fibronectinの産生を検討したところ、野生型BMDMとの共培養と比較してFABP7遺伝子欠損BMDMとの共培養でfibronectin産生低下しており、肝線維化程度が低下する要因との関連が示唆された。 以上のことから、FABP7はマクロファージの抗炎症性機能を制御を介して、線維芽細胞による線維化促進因子の産生に関わることがが示唆された。FABP7によるマクロファージの機能調節は、肝線維化病態治療において重要な役割を果たすかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的なコロナウイルス感染拡大により、海外からの実験試薬の到着が遅れたり、研究室でのリモートワークの実施により実験が行えなかったことにより予定していた研究計画よりも遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
脂肪酸結合蛋白質FABPのリガンドとなる脂肪酸の投与によりこれまで得られたマクロファージの機能がどのように修飾されるかについて検討を加える。 FABP7遺伝子欠損マウスに対し、FABP7遺伝子を導入した骨髄細胞を移植し骨髄キメラマウスを作製しレスキュー実験を行う。 さらに、得られた結果を取りまとめ、学会発表および論文執筆を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験計画の進捗よりも遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度において、遅れていた実験の遂行と、得られた結果を取りまとめ論文の投稿および掲載料として使用する。
|