研究課題/領域番号 |
20K16104
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
一ノ瀬 聡太郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80775768)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抑制性シナプス / 接着因子 / 微小管 / タンパク質結合 |
研究実績の概要 |
シナプスにおける膜タンパク質と微小管との相互作用を調べるために、シナプスにおける膜タンパク質をスクリーニングした既存の研究に対し、微小管関連タンパク質EB1の結合モチーフの検索を行った。その結果、GPR158、FLRT3、AGRL3、TENM2がこのモチーフを持っていることがわかった。このうち、 FLRT3、AGRL3、TENM2の3者はヘテロ3量体を形成する膜タンパク質であることから、このタンパク質複合体に着目することにした。中でも、TENM2には2つのスプライシングバリアントが存在し、それぞれのバリアントが興奮性シナプスと抑制性シナプスの分化誘導を行うことから、この分子を中心に解析を行った。まず、TENM2を初代培養神経細胞にてノックダウンしたところ、抑制性シナプスの数が減少した。次に、結合モチーフを含む、抜き出し領域を用いて結合実験を行ったところ、TENM2のこの領域で確かにEB1と結合していることがわかった。そこで、TENM2-EB1結合を阻害するドミナントネガティヴ体を初代培養神経細胞に発現させたところ、やはり抑制性シナプスの個数が減少しノックダウンの結果と一致した。このことから、EB1を介したTENM2と微小管の結合が、抑制性シナプスの分化・発達に重要であると考えられる。この研究をさらに進行させることで、膜タンパク質と微小管の相互作用によるシナプス分化・発達のメカニズムが解明できる。このことは、神経細胞におけるE/Iバランスの形成や神経活動の変化のメカニズムの解明へつながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TENM2は当初、シナプスに多く局在しているタンパク質であると考えられていたが、抗TENM2抗体を作成したところ、シナプス以外の局在が多数観察された。そこで、当初計画にはなかった、TENM2にHAタグを付加するノックインマウスを作成して裏付けを行った。また、ノックダウン実験においても分子の減少効率があまり良好とは言えず、こちらも更なる裏付けと今後の研究発展のために、ノックアウトマウスを作成した。これらの実験が追加で生じたため、予定していた実験の一部である、興奮性シナプスの解析および、興奮性・抑制性シナプスにおけるTENM2-微小管相互作用の対比観察が進行中の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、EB1を介したTENM2と微小管の相互作用を共焦点顕微鏡を用いて観察を行う。現在は抑制性シナプスにおける影響のみが検出されているので、興奮性シナプスに関しても追究する。TENM2と微小管の相互作用により、興奮性および抑制性のシナプス前後膜において細胞骨格や細胞膜、さらに細胞膜に存在する他の主要なイオンチャネルや受容体の局在がどのように変化するかをライブイメージングや免疫染色法を用いて観察、定量化して評価する。TENM2がどのような条件下の下でこれらの細胞骨格または関連分子と作用するかを、培養神経細胞における発達段階を追って調べる。また、TENM2の細胞外ドメインを結合させたビーズを作成し、これを培養細胞に接触させることで、ホモフィリックまたはヘテロフィリックな結合を形成させ、シナプス形成や微小管にどのような影響があるかを調べる。以上を通じて、興奮性および抑制性シナプスにおける細胞骨格アセンブリの差異の機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
他に優先的に使用するべき予算があったこと、また、COVID-19により消耗品の一部に調達、納品の遅れが生じているため、支払いが今年度になったものがある。
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