研究課題/領域番号 |
20K16105
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
稲葉 弘哲 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80791334)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一次線毛 / ホスホリパーゼC / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
一次線毛はほぼ全ての細胞で細胞周期静止期(G0期)に形成されるアンテナ様の構造物で、物理的・化学的刺激を受容し、細胞の増殖・分化・極性を制御している。G0期の細胞が増殖シグナルの受容によって細胞周期へ再進入するためには一次線毛の退縮が必須であり、この機構の破綻は適切な細胞周期の進行を妨げる。最近我々は受容体直下で機能し、カルシウムシグナルなど細胞内の様々なシグナルを制御するホスホリパーゼC(PLC)εが一次線毛退縮に必須であることを見出した。そこで本研究では一次線毛退縮におけるPLCεの機能解析を通じて、成長因子の受容により一次線毛が退縮する分子機構の全容解明を目的とした。 本年度はまず、siRNA耐性のPLCεを誘導発現するTet-On RPE1細胞の樹立を目指した。レンチウイルスを用いてrtTA3発現株を樹立し、ついでCMVtightプロモーター下でPLCεを発現する細胞株の樹立を目指したが、PLCE1遺伝子が約7 kbpと大きく、安定発現株を樹立できなかった。そこでEpisomal型ベクターpEBMultiを利用し、安定発現株の樹立を目指したが、継代する中でベクターが脱落してしまった。そのため、piggybacトランスポゾンを試し、安定発現株の作製に成功した。PLCεの過剰発現により、一次線毛退縮の表現型は相補された。また、下流の分子として考えられるAurora Aについて、恒常活性型と言われるT288D変異体の過剰発現によるPLCεKD細胞への影響を調べたが、相補はされなかった。また、一次線毛の形成や、退縮の過程におけるPLCεのタンパク質量の変化をWBで解析したが、目立った変化は認められなかった。 また、光遺伝学的手法を用いて、RPE1細胞においては低分子量Gタンパク質の中でRhoAが、PLCεを活性化し、細胞内カルシウムシグナルを活性化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、2ヶ月程実験を実施できなかったものの、上記のように、相補実験に成功したことで、PLCεの一次線毛退縮における表現型が確かなものとなった。また、上流の因子についても絞り込みが進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施できなかったRPE1以外の細胞におけるPLCεの一次線毛退縮における機能を検討する。また、PLCεの欠損による一次線毛退縮の異常が細胞周期に与える影響について、FACSや各種細胞周期マーカーを用いて検討する。上流・下流の分子機序については、PLCεの各種変異体を用いた相補実験によって絞り込みを進めるとともに、いくつかの候補分子については、血清添加によって一次線毛退縮を誘導した際の蛋白量や、リン酸化の程度についてPLCε欠損の影響をタイムコース解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度ほぼ予定通りの予算を使用したが、一部消耗品などの流通がコロナ禍によって滞っており、予定通りに購入できなかった物品があった。そのため、次年度に繰り越して使用する。
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