研究課題/領域番号 |
20K16106
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
久冨 理 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60773728)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | くも膜顆粒 / 脳脊髄液 / 脳髄膜 / 中枢神経系リンパ系 |
研究実績の概要 |
令和3年度は令和2年度に引き続き、脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)の排出路として古くから提唱されているくも膜顆粒(arachnoid granulation: AG)の形態・構造解析を行った。 近年、脳髄膜リンパ管や脳皮質の血管周囲腔などの中枢神経系リンパ系と呼ばれる構造物が、CSF排出路の候補として提唱されている。そこで、AGにおいてリンパ系の存在を検証するため、手術検体より採取したAGの組織標本より、リンパ管内皮細胞の分子マーカーのLyve-1、Podoplaninに対する免疫染色を行った。その結果、AG深部に存在する特有の細胞において、これら2つの分子の発現が認められた。 以前に研究代表者らは、ブタ脳髄膜においてAG様構造を同定し、その構造においてLyve-1の発現を確認している(Kutomi and Takeda, 2020)。この解析結果と合わせると、本研究成果は、形態や構成分子の点から、AGは進化的に保存されていることを示唆するものであるとともに、AGが中枢神経系のリンパ系として、CSF排出に関わる可能性を示す重要な知見になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、ヒトAGを構成する細胞において、リンパ管内皮細胞の分子マーカー(Lyve-1, Podoplanin)を発現していることを発見し、CSF排出に関するヒトAGの新たな機能を見出した。また、この結果とヒトAGの超微細形態解析結果をまとめて、現在論文投稿準備中である。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、ヒトAGの解析結果をまとめた論文の発表を目指す。必要に応じて、ブタ・ウサギにおけるCSF流路の解析を行う。また、研究代表者は本年度より新任地に異動したため、投稿の過程で追加解析の必要が生じた際は、本研究遂行のための各種申請を行い、研究体制を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もCOVID-19の影響により、学会がオンラインになるなど移動が制限され、これに伴い、旅費が当初の計画よりも減額となった。また、新任地への異動の準備のため研究活動を一時的に中断した。以上の2点の理由により、次年度使用額が生じた。これらの費用を、試料作製のための試薬・器具、抗体などの消耗品に使用する。
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