本研究では、in vivo環境でみられる分化細胞の細胞分裂に着目し、そのオルガネラ動態について先端的3D技法による三次元形態解析を行った。具体的には、1)分裂期細胞観察の効率化、2)オスミウム浸軟法による走査電子顕微鏡(SEM)観察、3)連続切片SEM法と光電子相関顕微鏡法(CLEM法)の応用、について検討した。 1)分裂期細胞観察の効率化:計画当初は、授乳ラットの下垂体前葉プロラクチン産生細胞とコレシストキニン投与で分泌刺激したラットの膵腺房細胞について解析を進めてきた。しかしながら、去勢した雄ラットの下垂体前葉性腺刺激ホルモン産生細胞にて、より効率的に分化細胞の分裂が観察できたことから、以後はこの系を中心に形態解析を進めた。 2)オスミウム浸軟法によるSEM観察:オスミウム浸軟法を用いて分化細胞の分裂期オルガネラを解析することで、特にゴルジ装置の分裂期動態が培養細胞の結果とは大きく異なり、分裂期を通してゴルジ層板のスタック構造が保持されていることがわかった。また、凍結準超薄切片を用いたSEM-CLEM法では、これらのスタック構造にシス槽とトランス槽のマーカー分子がそれぞれ存在することが示され、分裂期においてもゴルジ層板の極性が維持されていることが示唆された。 3)連続切片SEM法とCLEM法の応用:ゴルジ装置は、分裂期に横方向の繋がりが途切れてミニスタックをつくり、その後に小胞化すると言われている。そのため、分裂期ゴルジ動態の全体像を正確に捉えるためには、連続切片SEM法とゴルジマーカーの局在を結びつけた解析が不可欠である。本研究では、水溶性樹脂のLR whiteを用いることで、連続切片に免疫組織化学染色を施すことを可能とした。現在は、一部のゴルジマーカーについての蛍光標識に成功しており、その結果として分化細胞では分裂期を通してゴルジ装置の小胞化が見られないことが示唆された。
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