申請者らはこれまでに、phosphoinositide 3-kinase (PI3K) がEGF刺激依存的にミトコンドリアポアタンパク質であるvoltage-dependent anion channel 2 (VDAC2) と結合することを見出し、この結合を介してエンドソームがミトコンドリアに繋留されるという予備データを得ている。また、このミトコンドリア-エンドソーム間相互作用によりエンドソームの成熟化が促進される予備データも得られた。しかし、VDAC2がどのようにしてエンドソームの成熟化を促進するのか、その分子メカニズムは未知である。そこで本研究は、VDAC2-PI3K間結合を介したミトコンドリア-エンドソーム間相互作用によるエンドソーム成熟化促進メカニズムの解明を目的とした。昨年度は査読者からのコメントに対する実験をおこない修正した論文を投稿したがリジェクトとなった。今年度はいくつかの雑誌に投稿し、査読者の要求に応える実験を再びおこなった。ミトコンドリア-エンドソーム間相互作用中に起こる、初期から後期へのエンドソーム成熟化のタイムラプスデータの取得、および初期と後期それぞれのエンドソームマーカーの蛍光強度を定量解析した。また、光遺伝学法による人為的なミトコンドリア-エンドソーム間相互作用後に、VDAC2ノックダウン細胞ではエンドソームの成熟化が促進されないことを示すタイムラプスデータの取得などに取り組んだ。この論文は受理され、2023年3月11日にCell Reports誌で公開された(DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112229)。研究期間全体を通じて、蛍光イメージング手法を駆使しミトコンドリア-エンドソーム間相互作用とそこで起こるエンドソームの成熟化を可視化し、それらを詳細に観察して定量解析した。
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