申請者は、大腸に発現する水チャネル「アクアポリン(AQP)」の機能解析を行うなかで、抗がん薬により大腸炎が発症した際には、大腸に発現するほとんどのAQPが減少するのに対して、AQP9のみが著明に増加するという非常に興味深い知見を得た。また、この変化は大腸に存在するマクロファージに由来する可能性が示唆された。マクロファージはメタボリックシンドロームや動脈硬化、がんの転移など種々の疾患の発症や増悪に関与していることから、マクロファージの特徴や機能を解析し、疾患との関わりを明確にしていくことは、様々な疾患の予防や新しい治療薬の開発の一助になり得ると考えられている。本申請課題では、マクロファージにおけるAQPの機能やその生理的意義を解析することにより、マクロファージにおけるAQPをターゲットとした炎症性疾患に対する新規予防法や治療法について提言することを目的とした。マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞にリポ多糖(LPS)を添加すると、炎症性のM1マクロファージへの極性化が確認でき、このときAQP9のみが約10倍有意に増加したが、インターロイキン4(IL-4)により抗炎症性のM2マクロファージへ誘導した場合には、いずれのAQPも変化は認められなかった。一方、AQP9が発現する野生型マウスから採取した腹腔マクロファージは、AQP9が発現していないノックアウトマウスの腹腔マクロファージと比べて、貪食能および遊走能が低いことがわかった。以上のことから、マクロファージに発現するAQP9は炎症性の免疫応答を負に制御する可能性が示唆された。
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