研究課題/領域番号 |
20K16125
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
中島 明子 久留米大学, 医学部, 助教 (40867024)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | cAMP / オルソログ / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
理論的リバースジェネティクスは、生物進化におけるアミノ酸配列のバリエーションについて変異分布関数(積率母関数数)の2次モーメントを利用する。2次モーメントは数学的には分散に相当する項目で、変異の平均頻度(1次モーメント)では表しきれない「変異のしやすさ」の指標である。この項目を「変異アミノ酸種x生物種の和」として離散的な代数和で表現することで、計算の簡略化を試みた。実際に、cAMP関連タンパク質であるHCNチャネルに適用したところ、HCNチャネルのcAMP結合ドメイン、電位依存性ドメイン、さらにPIP2結合部位など複数にわたる既知の機能ドメインを明確にラベルすることに成功した。さらに、このBioinformatics計算法(Phylogenetic kinetic value法:PKV法)を、cAMP関連タンパク質OMPに適用したところ、OMPの内部にカルパインファミリーの切断サイトを見つけた。OMPはCAPN5では切断されなかったが、CAPN5以外のCAPNによって切断される可能性を見出した(Mol. Brain, 2022)。またOMPには、高度に保存されたロイシンリッチ領域があることも突き止めた。ロイシンリッチ領域は他のタンパク質において核外輸送シグナル(NES)として知られている。ロイシン部分をアラニンへ変異させたアラニン変異型OMPを作成し、HEK293T細胞に発現させた。すると、アラニン変異型OMPは野生型OMPに比べて核に存在する割合が増加し、ロイシンリッチ領域がNESとして機能することを突き止めた(Mol. Brain, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的リバースジェネティクスの定式化に成功し、HCNで既知の機能ドメインを標識することが可能であることが分かった。さらに、多くの生理機能が未知であるOMPに適用することで、あらたに二つの機能ドメインを発見することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HCN、OMPおよびその他の研究対象分子にも適用を広げ、PKV法の汎用性を明らかにするとともにピンポイントで変異実験を可能とする理論的リバースジェネティクスの手法の確立をさらにすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、PKV法をもとにリバースジェネティクスを実行することで複数の蛋白に新規機能ドメインを発見した。そのため、分子実験を集中的に実施したため、動物実験にいたらなかった。 前年度からの繰越分は、予定されていた実験計画に基づき使用する予定である。
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