研究課題/領域番号 |
20K16127
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
八子 英司 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 研究員 (00768880)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ピルビン酸 / 高グルコース / 細胞死 / 糖代謝 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏負荷により、短時間で広汎な細胞死が誘導されることを見出している。本研究課題では、高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏環境下における分子的・代謝的変化を解析し、転写因子ATF4とPoly (ADP-ribose) polymerase (PARP)の活性化機構と解糖系-クエン酸回路の糖代謝制御機構を理解し、この細胞死の誘導メカニズムを明らかにすることを目的としている。PARP活性化による細胞死ではApoptosis-inducing factor (AIF)の核内移行が提唱されているが (Wang et al, 2012)、本条件下ではAIFの核内移行は確認されなかった。また、ATF4の核内移行は確認されているが、ポリADPリボシル化は確認されなかった。加えて、統合的ストレス応答の阻害剤ISRIB投与によっても本細胞死は抑制されなかった。一方で、高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏環境下において、ミトコンドリア呼吸量の低下が確認されているがPARP阻害剤投与でも改善は見られていない。ピルビン酸からアセチルCoAを生成するPyruvate dehydrogenase (PDH)に着目し、酵素活性を測定した。その結果、PDH活性は高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏環境下で顕著に減少し、PARP阻害剤存在下においても有意に減少していた。これらのことから、高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏環境下では、ネクローシス様な細胞死が誘導されること、ミトコンドリア呼吸量の低下にはPDH活性の減少が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高グルコース・外因性ピルビン酸環境負荷により、ATF4とGAPDHのポリADPリボシル化の亢進が確認できなかった。さらに、AIFの核内移行も見られなかった。しかしながら、PARP阻害剤によりGAPDH活性や細胞生存などは改善することなどから、高グルコース・外因性ピルビン酸環境下において、GAPDHはPARPの間接的なターゲットであること、ネクローシス様な細胞死が誘導されることが示唆された。一方で、PDH活性は本条件下で有意に減少しており、PARP阻害剤存在下においても改善しないことなどを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
高グルコース・外因性ピルビン酸欠乏環境下におけるPDH活性減少のメカニズムの解明と電子伝達系複合体活性やサブユニットタンパク質量の変化を解析する。これらの事により、同環境下におけるミトコンドリア機能低下のメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる学会参加の減少などにより未使用額が生じた。 未使用分は2021年度で抗体や細胞培養関連用品に使用する予定である。
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