研究課題/領域番号 |
20K16128
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠田 康晴 東北大学, 薬学研究科, 助教 (70806405)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シグマ1受容体 / 筋萎縮性側索硬化症 / シグマ1受容体作動薬 / 創薬 |
研究実績の概要 |
運動神経細胞様の培養細胞であるNSC-34細胞を用いて、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連した遺伝子変異がシグマ1受容体に与える影響を検討した。これまでの研究結果において、NSC-34細胞に発現させたシグマ1受容体ALS変異体(E102Q)が界面活性剤に不溶な凝集体を形成すること、凝集体形成に伴い細胞毒性を生じること、シグマ1受容体作動薬SA4503の処置で凝集体形成や細胞毒性が軽減できることなどを明らかとした。今年度はALS変異体がどのように凝集体を形成するのか検討した。 シグマ1受容体は以前より、コレステロールと結合することで細胞内での局在や機能が調節されることが報告されてきた。一般にコレステロールのような脂質の結合はタンパク質を界面活性剤へ不溶にすることがあることから、NSC-34細胞におけるALS変異体の凝集体形成にコレステロールが寄与するかをプルダウンアッセイおよび免疫染色法により検討した。結果として、ALS変異体は野生型(変異なし)と異なり、NSC-34細胞においてコレステロールと結合すること、コレステロールが凝集体に蓄積すること、SA4503の処置によりALS変異体とコレステロールの結合が抑制されることなどを明らかとした。 本年度の検討は、シグマ1受容体ALS変異体(E102Q)が運動神経細胞において毒性を発揮するメカニズムとして、コレステロールとの結合に伴う凝集形成が関与することを示唆しており、今後ALS病態における治療方法として有用であることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シグマ1受容体のALS変異(E102Q)がどのようにして運動神経に障害を与えるのか検討し、新たな原因としてコレステロールの寄与を見出した。生体においてシグマ1受容体の遺伝子変異に関連したALS病態において、新規治療標的となりうることを示唆する有益な情報が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は従来通り作製中のシグマ1受容体の遺伝子変異を導入したノックインマウスに対し、作動薬の効果を検討することで、研究のさらなる発展を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度異動の予定ができ、支出(使用)の時期がずれ込むこととなった。全体の研究計画に支障はないと同時に、差額については異動先にて使用予定である。
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