研究課題/領域番号 |
20K16136
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
神林 隆一 東邦大学, 医学部, 助教 (70837492)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 重水素化 / 心房細動 / 抗不整脈薬 / 病態モデル / 心房有効不応期 |
研究実績の概要 |
心房細動治療薬dronedaroneの重水素化誘導体poyendaroneの抗心房細動作用を発作性心房細動犬モデルを用いて評価し、dronedaroneの結果と比較することで、重水素化がdronedaroneの抗心房細動作用に与える影響を検討した。 発作性心房細動犬モデルに0.3および3 mg/kgのpoyendaroneまたはdronedaroneを累積的に静脈内投与した(各薬物n=4)。心房を高頻度電気刺激することで心房細動を誘発し、その持続時間を測定することにより抗心房細動作用を評価した。さらに、抗心房細動作用の特性を評価するため、心房を150、200および300 bpmの刺激頻度で電気刺激し、心房間伝導時間および心房有効不応期を測定した。 Poyendaroneは有意に心房細動持続時間を短縮し、その短縮の程度はdronedaroneより大きいことから、poyendaroneはdronedaroneと比較し、より強力に心房細動を抑制することが示された。さらに、poyendaroneは刺激頻度依存的に心房間伝導時間を延長させ、逆頻度依存的に心房有効不応期を延長させたことから、心筋のNaおよびKチャネル遮断作用を有することが示唆された。Poyendaroneおよびdronedaroneはいずれの刺激頻度の電気刺激時においても同程度に心房間伝導時間を延長させた。一方で、poyendaroneは刺激頻度150および200 bpmの電気刺激時ではdronedaroneと同程度に心房有効不応期を延長させたが、より高い刺激頻度である300 bpmの電気刺激時には、心房有効不応期をdronedaroneと比較し約2倍延長させた。 これらの結果から、dronedaroneの重水素化は、心房細動発生時に観察される高い心房興奮頻度において、心房有効不応期延長作用を増強させることで、抗心房細動作用を増強させることが示唆された。また、poyendaroneは、dronedaroneと比較し、より強力な心房細動治療薬として臨床応用できる可能性を見出した。本研究で得られた成果は原著論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画をしていた発作性心房細動犬モデルの構築が順調に進んだことにより、重水素化がdronedaroneの電気生理学的作用を修飾することにより、抗心房細動効果を増強させることを解明できた。一方で、dronedarone重水素化誘導体の薬効と薬物動態の関係についての検討が未実施である。次年度に、本年度実施した発作性心房細動犬モデルの実験より得られた血漿サンプルを使用し、dronedarone重水素化誘導体の血中濃度を測定する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
心房細動はその病態の進行度から発作性および持続性心房細動に分類される。本年度、発作性心房細動に対するdronedarone重水素化誘導体の抗心房細動作用評価を実施した。次年度以降は、さらに心房細動の病態が進行した状態を反映する持続性心房細動犬モデルを構築し、dronedarone重水素化誘導体の抗心房細動作用を評価することで、重水素化の有用性を検証する予定である。また、dronedarone重水素化誘導体の臨床応用を進めるためには、その抗心房細動作用の特徴づけを行い、既存の心房細動治療薬との違いを明確にする必要がある。そこで、発作性心房細動犬モデルを引き続き活用し、既存および開発中の心房細動治療薬を評価し、dronedarone重水素化誘導体との比較検討を進めていく。
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