研究課題
心房細動(AF)の治療に使用する抗不整脈薬は、心室不整脈を誘発する危険性がある。その有害作用を減弱する手段として重水素化に着目し、重水素化がその循環薬理作用をどのように修飾するかを解明することを目的とした。今年度は発作性および持続性AF犬モデルの薬理学的特徴づけを実施した。Ⅰ群薬pilsicainideは発作性AFの持続時間を短縮したが、Ⅲ群薬amiodaroneは短縮しなかったことから、発作性AF犬モデルはINa抑制作用を介した抗AF効果を検出することが示唆された。IK,ACh阻害薬AVE0118は発作性AFを抑制せず、持続性AFを効果的に停止した。持続性AF犬モデルは病態の進行に伴い増加するIK,AChを標的とした抗AF効果を検出できることを示した。上記病態モデルを活用し、dronedarone重水素化誘導体poyendaroneの循環薬理作用を評価し、dronedaroneと比較することで、重水素化がその作用に及ぼす影響を検討した。①Poyendaroneは発作性AFの持続時間を短縮し、その程度はdronedaroneより大きかった。Poyendaroneは刺激頻度300 bpmでの心房有効不応期をdronedaroneと比較し約2倍延長させた。重水素化はAF発生時の高い興奮頻度における有効不応期延長作用を亢進させ、発作性AFの抑制効果を増強することが示唆された。②Poyendaroneおよびdronedaroneはいずれも2/4例で持続性AFを停止したことから、重水素化は持続性AFの停止効果に影響を与えないことが示された。一方、poyendaroneはdronedaroneと比較し、QTcおよびSTVの延長程度が小さいことから、重水素化は心室不整脈誘発リスクを低減する可能性が示唆された。Poyendaroneはより有効かつ安全な新規AF治療薬候補であると考えられた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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