グルタチオン(GSH)は活性酸素種の消去など細胞の機能維持に必須の役割を果たしており、細胞内のGSHの枯渇は鉄イオン依存性細胞死・フェロトーシスを引き起こす。本研究では、GSH枯渇により引き起こされるフェロトーシスに焦点を当て、細胞内のアミノ酸再利用系として機能するジペプチダーゼCNDP2についてCNDP2欠損マウスおよびそのマウス由来細胞を用いた解析を行った。 ゲノム編集により樹立したCNDP2欠損(CNDP2KO)マウスにアセトアミノフェン過剰投与を行なった結果、CNDP2KOは野生型(WT)と比べて著しく生存率が低下し、肝障害マーカーのALT値やAST値、腎機能マーカーのBUN量はWTよりも高値を示し、肝臓および腎臓組織の組織学的解析により障害部位がWTよりも有意に増加したため、アセトアミノフェン誘導性肝障害に脆弱であることが示された。 フェロトーシス研究においてその適切なマーカーがないため、その判定が難しいことが問題として挙げられる。そこで、フェロトーシス細胞を認識するラットモノクローナル抗体の作出を目指した検討を行った。768クローンのハイブリドーマより選抜されたFerAbは、種々の刺激によりフェロトーシスを誘導した細胞と強く反応したが、アポトーシスを誘導した細胞には全く反応しないため、フェロトーシスを特異的に検出できると考えられた。 最終年度では、食品等からフェロトーシスを制御する機能性成分の探索を行った所、ニンニク抽出物中には細胞内GSH量を増大させる効果を見出し、この作用は培地中のシスチンが必要不可欠であることがわかった。また、漢方の一種である黄柏には細胞内のGSH量には影響を与えないが、フェロトーシスを抑制する効果を有することを見出した。
|