研究課題/領域番号 |
20K16146
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
清水 康平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70727073)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | LUBAC / 炎症 / 免疫 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
ユビキチン化酵素複合体LUBACは細胞内シグナル伝達の足場となる直鎖状ユビキチン鎖を形成することにより、炎症応答や免疫制御を司る転写因子NF-κBの活性化に極めて重要な役割を果たしている。近年、直鎖状ユビキチン鎖を含む混合鎖や分岐鎖など複雑な形態を有するユビキチン鎖の存在が明らかとなり、LUBACと別のE3ユビキチン化酵素が協調的にユビキチン鎖形成に関与していることが示唆されている。本研究では、LUBACとの協働が想定されるE3について生化学・細胞生物学的手法やノックアウトマウスを用いた個体レベルの解析を展開し、LUBACとの相互作用がNF-κB経路を中心に生体防御応答をどのような分子メカニズムで制御するか、また、炎症性疾患の発症や病態形成における役割について検討した。 独自に同定した複数のLUBAC結合因子を解析した結果、NF-κBの活性化を顕著に抑制するE3を見出し、当該E3は炎症刺激依存的にLUBACに結合することが明らかとなった。次に、E3-LUBAC間の相互結合領域を同定し、当該E3の結合が、LUBAC活性の減弱及びLUBAC構成因子の分解を誘導している可能性を見出した。興味深いことに、当該E3ノックアウト(KO)マウスの胎児線維芽細胞(MEF)では、ネクロプトーシスの感受性が野生型MEFに比べて亢進していることが明らかとなり、KOマウスにおいて全身性炎症反応症候群が増悪するという結果との関連性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた生化学・細胞生物学的解析が概ね終了し、次年度に予定していたノックアウトマウスの病態生理学的解析に着手することができた。また、生体防御応答の分子メカニズムの解析について、細胞死と炎症応答のクロストークに関して特に進展が見られた。
|
今後の研究の推進方策 |
複数のLUBAC基質が細胞死制御において重要な役割を果たしていることが報告されているため、当該E3がLUBACとの協調、あるいはLUBACの活性制御を介して細胞死とそれに付随する炎症反応を制御している可能性について精査することが課題となっている。そこで、当該E3がLUBACと共存下でLUBACの標的となるタンパク質に付加されるユビキチン鎖タイプを生化学的に解析し、生体防御応答への影響を検証する。また、独自に開発したLUBAC阻害剤を活用して検証を進める。 デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルでは、KOマウスにおいて大腸炎が増悪しているという予備的結果が得られており解析を進めている。今後、KOマウスにおいて観察される炎症性疾患の増悪が、LUBAC制御を介した細胞死の制御と関連しているか、遺伝学的及び薬理学的(LUBAC阻害剤の効果の検証)解析にて検証する。
|