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2020 年度 実施状況報告書

Mgaバリアントの減数分裂時期特異的な産生の生物学的意義と分子メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K16147
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

浦西 洸介  埼玉医科大学, 医学部, 助教 (40783238)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードMga / PRC1.6 / bHLHZ / T-box / ES細胞 / 生殖細胞
研究実績の概要

本研究では、ES細胞やGS細胞におけるMgaや、Mgaを含むPRC1.6複合体の機能解析を行っている。PRC1.6複合体は生殖細胞の形成において、重要な役割を果たしていると言われており、その複合体の中でもMgaはN末端にT-box、C末端にbHLH-LZという2種類の異なるDNA結合領域を含み、PRC1.6複合体の動態をコントロールしていると考えられる。私は生殖細胞において、bHLH-LZ領域を含むC末端を欠如したMgaタンパク質の新規スプライシングバリアントを同定し、その新規スプライシングバリアントの生殖細胞における作用機序を解明しようと試みている。私はまずそれぞれのDNA結合領域の機能を明らかにするために、一部、生殖幹細胞と似たような性質を有するES細胞におけるノックアウト実験を試みた。CRISPR-Cas9の系を用いて、MgaのT-boxもしくはbHLH-LZ領域を含むExonを欠落させることによってMgaΔT-box ES細胞(ΔT ES細胞)およびMgaΔbHLH-LZ ES細胞(ΔbHLH ES細胞)を樹立し、それぞれの遺伝子発現を比較した所、異なる遺伝子群を制御していることが明らかになった。そこで、どのような遺伝子群が制御されているかをGO解析によって検証した所、興味深いことにどちらも減数分裂関連遺伝子関連であることが明らかになった。次に、これらの遺伝子とのPRC1.6複合体との関連を検証するために、Pcgf6遺伝子のChIP-sequenceのデータを用いて検証したところ、T-box領域によって制御される遺伝子群よりもbHLH-LZ領域によって制御される遺伝子群のほうがPRC1.6複合体との関連性が強いということ、その中でも減数分裂開始に重要である遺伝子であるMeiosin-STRA8シグナルを抑制しているという新たな知見を得た。これらのことから、精巣におけるC末端を欠くMgaは生殖細胞の減数分裂開始時において、正規のPRC1.6複合体に対して負に働き、Meiosin-STRA8シグナルを正に制御し、減数分裂を促進させている可能性が強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではMgaおよびPRC1.6に着目して研究を行っているが、現時点で上記のようにMgaの2種類のDNA結合領域の機能の解析を既に明らかにしており、現在、既に上記の実験結果をまとめ、国際誌であるSTEM CELLSに投稿、Revise実験に至っている。また、上記の知見を元に、作成したMgaバリアントノックアウトマウスの解析も同時並行で進んでいるところである。現在、マウスの妊孕性においてはMgaバリアントノックアウトされたマウスの精子および卵子においては妊孕性を有することを明らかにしているので、現在はその形成過程において、野生型と比べて齟齬があるかを検証するため、様々な時期で精巣や卵巣、および胎児期の始原生殖細胞を回収し、多角的な視点から検証を行っている。また、なぜこのバリアントが減数分裂期にある生殖細胞にのみ形成されるのかという点でも、どのような機序が働いているかや、このMgaのバリアント特異的なExonに結合するRNA結合タンパク質の候補をいくつか同定し、それに着目して研究を進めているところである。

今後の研究の推進方策

現在、Mgaバリアントノックアウトマウスの解析を進めているが、その初期段階としてMgaバリアントを欠損した場合でも、雌雄ともに妊孕性を有する配偶子が形成されていることが明らかになっている。Mgaと同じくPRC1.6複合体に含まれるL3mbtl2遺伝子のノックアウトマウスでも8週齢などのまだ若い時期の生殖細胞には影響が見られないが、老いてくるとノックアウトの影響により生殖幹細胞が失われることが報告されている。Mgaバリアントもその可能性を考慮するため、様々な週齢の雄マウスの精巣を採取して形成された精子の数や幹細胞の数を野生型と比較したり、雌マウスで形成された卵子の数を比較したりするなどの検証を行っていきたい。また、雌においては減数分裂は胎児期に起こるため、胎児の生殖細胞を回収するなどして、減数分裂に入る時期などの違いが見られないかどうかを検証していく予定である。また、Mgaバリアント形成の分子メカニズムにおいては、現在Mgaバリアント特異的なExonに結合するとした同定した遺伝子のノックアウトを行っており、樹立したノックアウトES細胞などのMgaバリアントの発現変化やそれに伴う遺伝子発現の変化を検証していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

現在、概ね実験計画に沿って順調に実験計画をこなせてはいるが、2020年度初頭には新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言によって一時的に不要不急な出勤が差し控えられる時期があったため、わずかではあるが一部本年度使用する予定額に満たないということが出てしまった。本年度ではマウス実験の増加が考えられ、そのために予定より多く研究費が必要となることが考えられるため、この差額をマウス実験のための費用として当てて行く予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Identification of meiotic germ cell-specific Mga splice variant that functions as a negative regulator of non-canonical PRC1 leading to the promotion of meiotic onset2020

    • 著者名/発表者名
      Kitamura Y, Uranishi K, Hirasaki M, Nishimoto M, Suzuki A and Okuda A
    • 学会等名
      ISSCR 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] Generation of meiotic germ cell-specific Mga splice variant for promoting meiotic onset via inactivation of non-canonical PRC12020

    • 著者名/発表者名
      Kitamura Y, Uranishi K, Hirasaki M, Nishimoto M, Suzuki A and Okuda A
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-12-27  

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