研究課題/領域番号 |
20K16152
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷貝 知樹 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50868669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NASH |
研究実績の概要 |
本研究計画では近年の先進国において深刻化している生活習慣病である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や糖尿病の早期診断マーカーの開発や糖尿病処方薬の作用メカニズムの解明を目指している。これら代謝性疾患発症の起点として肝臓における糖・脂質代謝の破綻と炎症の惹起という機序が知られている。私たちは肝臓における糖・脂質代謝の主要制御因子であるPeroxisome-proliferator activated receptor alpha (PPARα)がエクソソーム産生を担う代謝酵素の発現を抑制することを明らかにし、さらにその代謝酵素によって分泌されるエクソソームは炎症を惹起することを示した。今年度はこの昨年度のデータを元にPPARα によるエクソソーム分泌制御因子の発現制御メカニズムの解析を行った。PPARαに対するクロマチン免疫沈降法を用いてエクソソーム分泌制御因子の遺伝子座におけるPPARαの結合配列を特定することに成功した。またこのデータを元にエンハンサーノックアウトマウスを作成することに成功した。今後このマウスを用いてPPARαによる遺伝子発現抑制メカニズムを解析する予定である。一方で、エクソソーム分泌制御因子の生理的機能を解析するため、当該遺伝子の過剰発現およびノックダウンを誘導するアデノ随伴ウイルスを作成した。本研究課題では引き続きPPARαが制御 するエクソソームの質的・量的な変化を網羅的に解析し、脂質代謝と炎症性エクソソーム分泌の関連について解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
困難と思われていたPPARaによる発現制御領域の特定が、マウス肝臓を用いたクロマチン免疫沈降法の確立により可能となった。またノックアウトマウスの作成にも成功しており今後の生体内における発現制御メカニズムの解明が加速できると期待される。また、過剰発現およびノックダウンを行うアデノ随伴ウイルスを用いた実験系も確立しており、生体内における表現型解析も加速すると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
クロマチン免疫沈降法によって同定したPPARa結合領域のノックアウトマウスの解析を進めることでPPARaの発現抑制メカニズムの解析を進めたい。また、アデノ随伴ウイルスを用いた実験も引き続き行い、NASHにおける炎症性エクソソーム制御機構を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は民間の研究助成金が複数獲得できたため、研究経費としてそちらを優先的に使用し、本助成金は次年度で使用することとした。
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