本邦で罹患数も死亡者数も増えている膵癌を早期検出するには、「膵癌ハイリスク群の囲い込み」が必須である。申請者は、これまで自身で進めてきた抗がん剤の工夫や支持療法の強化だけでは膵癌の抜本的な予後改善は見込めないと考え、ハイリスク群の囲い込み法の確立を基礎研究の力を借りて成し遂げたいと考えるようになった。本研究では、臨床的に膵癌の高危険群のひとつと考えられている膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm; IPMN)のうち、浸潤癌に進展する規定因子の同定を、GNAS変異導入ヒト膵管上皮細胞と膵癌細胞株を用いて、遺伝子編集によるノックアウトライブラリーと次世代シークエンスによって網羅的に試みる。本研究で、GNAS変異を持つIPMN患者の中での膵癌進行の病態生理を明らかにすることにより、IPMNの中でもさらに膵癌の高危険群の新たな絞り込み法を確立し、効率的な膵癌スクリーニングにつなげることで、膵癌の予後改善に寄与したいと考えた研究を進めた。本年度は、IPMNからの膵発癌は、膵の他の部位に発生する通常型膵癌もありうるが、IPMN由来浸潤癌がある。また、IPMNにはGNAS遺伝子の変異が多いことが特徴である。ここでは、年率1-2%と言われるGNAS変異を持つIPMN様病態から浸潤癌に至る人がなぜ存在するのか、GNAS変異から浸潤癌に至るまでの過程における必須の遺伝子を同定を進めた。
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