申請者は、グロボ系糖脂質の新たな発現誘導機構の解明と腎症への関与を明らかにするために本研究を遂行した。最終年度においては、糖尿病性腎症モデルマウスの腎臓で発現が増加していたガラビオシルセラミドという糖脂質の炎症ならびに細胞死についての生理活性評価を行った。これまでに、自然免疫受容体であるToll様受容体(TLR4)を介した炎症反応促進にガラビオシルセラミドが関与することを明らかにしていた。さらに、今年度はこのToll様受容体(TLR4)を介して生じる炎症性細胞死という最近発見された比較的新しいタイプの細胞死に関与することを初めて明らかにした。糖尿病性腎症の病態では、炎症はもちろんのこと細胞死が発症や増悪に関与することが知られている。しかし、これまでどのような物質がどのようなメカニズムでそれらを引き起こすのかについてはほとんど分かっていなかった。本研究では、ガラビオシルセラミドがToll様受容体ならびに細胞死に関与する重要な蛋白質分解酵素と相互作用することで、病態を悪化させている可能性を明らかにできた。今回の研究により、今後糖尿病性腎症においては、炎症反応や細胞死をターゲットとした治療法や治療薬開発につながり、QOLが著しく低下する腎不全への移行を遅らせることや困難な治療が改善されると考えられる。なおこの内容については、第65回日本糖尿病学会年次学術集会、第41回糖質学会年会、第16回東北糖鎖研究会、第95回日本生化学会大会にて発表を行った。
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