研究課題
ユビキチン様の修飾システムであるUFM1システムに関わる遺伝子の変異が遺伝性の重度発達障害の原因遺伝子であることを見出してきた。しかしながら肝心のUFM1の標的基質が不明であったため、UFM1システムの活性が低下した際になぜ病態を発症するか不明であった。本研究課題では質量分析によって同定したUFM1の基質Cytochrome-b5 reductase 3 (CYB5R3)に注目し解析を行った。CYB5R3の遺伝子変異によっても発達障害が報告されておりUFM1システムに関わる遺伝子でみられた症状と酷似していた。in vivoとin vitroの解析からCYB5R3の214番目のリジンがUFM1により修飾 (UFM1化)されること、UFM1の修飾によりCYB5R3からFAD (Flavin Adenine Dinucleotide)が解離しCYB5R3の活性が低下することを見出した。一方CYB5R3は脂肪酸の不飽和化やコレステロール生合成に関与することが知られているが、K214R変異体を用いた解析により脂肪酸の不飽和化やコレステロール合成のいずれもUFM1化が関与しないことがわかった。またER-phagyをモニターするプローブRFP-GFP-KDELを用いて解析を行ったところ、CYB5R3 K214R変異体ではER-phagy活性が低下しておりCYB5R3のUFM1化がER-phagyに関わることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
CYB5R3がUFM1により修飾されるとCYB5R3活性が低下することを見出した。さらにUfm1化できないCyb5r3 K214Rノックインマウスを作出した。このマウスを用いることでCyb5r3のUfm1化される生理的意義を調べることができる。
現在過剰発現系を用いた解析を行っているため、ストレス等でCYB5R3のUFM1化が促進される条件を調べる。作出したCyb5r3 K214Rノックインマウスを用いて、個体レベルでの解析を進めるとともに、この変異マウスから線維芽細胞を単離し細胞レベルでのさらなる解析を行う。
すべて 2020
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J Med Genet.
巻: 57 ページ: 835-842
10.1136/jmedgenet-2019-106496