研究課題/領域番号 |
20K16162
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
小笠原 千絵 金沢医科大学, 医学部, 特定助教 (10708944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミクログリア / アルツハイマー病 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病はアミロイドβとタウの異常蓄積を特徴とする神経変性疾患である。これまで、タンパク質の蓄積阻害や除去を目的とした治療開発が進められているが、いずれも開発中止となっており、同疾患の発症機序に基づく新規分子標的の発見と根本的治療方法の創出が急務である。ミクログリアは貪食能とサイトカイン産生能を有し、中枢神経系の防御及び恒常性を維持する免疫細胞である。ミクログリアはアルツハイマー病疾患の病態進行に寄与し、治療の標的として期待されているが、同疾患における機能は明らかになっていない。本研究ではヒトアルツハイマー病態を再現した次世代アルツハイマー病モデルマウス とミクログリア特異的遺伝子改変マウス を用いてアルツハイマー病進行におけるミクログリアの脳内動態と病態における役割の分子機序を明らかにして、新たな創薬の標的を創出することを目的とする。今年度は本研究課題で使用するミクログリア特異的遺伝子改変マウスを作製し、表現型や特異性を解析し、マウスの有効性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病におけるミクログリア細胞の本質的な機能を明らかにする為にミクログリアを可視化可能マウス(CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-EYFP)と同細胞を特異的に除去可能な遺伝子改変マウス(CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-DTA)を樹立し、アルツハイマー病を発症するhAPP-KIマウスと交配した。このうちhAPP-KI/ CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-EYFPマウスにタモキシフェンを投与し、ミクログリアをEYFPにて標識した後、脳からミクログリアを調整してフローサイトメトリーにて解析したところ、97%以上のミクログリア細胞がEYFP陽性となっていた。また同マウスを用いてミクログリアの脳内分布解析をしたところ、アミロイドβが沈着している周辺にミクログリアが集積していることが確認できた。また、hAPP-KI/ CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-DTAマウスにタモキシフェンを投与し、ミクログリアを除去したところ、90%以上のミクログリア が4週間以上に渡って除去可能であることが明らかになった。これらの結果から、樹立したミクログリア特異的遺伝子改変マウスのシステムが適切に機能していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は週齢を重ねてアミロイドβの沈着が進むにつれてミクログリアの分布がどのように変化するのか、ミクログリア可視化可能マウスhAPP-KI/CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-EYFPの脳を用いて免疫染色を行い、解析を行なっていく。また、継時的にhAPP-KI/CX3CR1creERT/Rosa26-lsl-DTAマウスにタモキシフェンを投与し、アミロイドβの沈着やアルツハイマー病がどのように変化するのか、解析を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の為、学内における研究活動の制限がかかり(R2年5月~7月末まで) 当初予定していた研究が全て行うことが困難であったため、消耗品の消費が少なかった。また、参加予定していた学会がオンライン開催となり旅費として計上していた費用を使用しなかった。更に、本研究では遺伝子改変マウス4系統を用いて実験を行う予定であったが、このうち2系統の繁殖が悪く、必要なマウスの数を準備することが難しく実験を行えなかった為、消耗品の経費が予定よりも減ったことが大きな理由である。今年度は次年度使用額として蛍光標識抗体と磁気ビーズと遺伝子改変マウスの飼育料に使用する。また追加で日本免疫学会学術集会に参加予定である。
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