研究課題/領域番号 |
20K16164
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮井 智浩 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (30812549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 多臓器円環 / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は、アトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて発症当初から異常に発現が亢進するホルモンタンパク質に着目し、遺伝学的・分子細胞生物学的手法によって病態との関係を明らかにすることを目的としている。本年は遺伝子欠損マウスの作出とその表現型解析を中心に研究を進めた。その結果、遺伝的なアトピー性皮膚炎モデルマウス(Jak1-Spadeマウス)において、発症率の低下と炎症強度の顕著な減弱を認めた。さらに、薬剤塗布によるアトピー性皮膚炎モデルマウス(MC903塗布モデル)においても、耳介皮膚の肥厚減弱などの炎症緩和が認められた。これらより、全身性の代謝制御異常を遺伝的摂動によって抑えることによって局所の皮膚炎が緩和することが示された。これはヒトアトピー性皮膚炎における病態理解や新規治療法の開発などに繋がる可能性のある、重要な知見であると考えられる。今後、研究計画にも予定している通り、さらに詳細な解像度での分子・細胞メカニズムを明らかにしていきたい。さらに、われわれはヒトアトピー性皮膚炎患者様より幅広いデータ(皮膚組織の遺伝子発現、血液検査等を含む)を大規模に収集させていただいている。今後、マウスで得られた基礎的な知見をヒト臨床に還元するトランスレーション研究を加速させることによって、代謝異常型のアトピー性皮膚炎患者の的確な層別化と、有効な分子標的薬の開発・臨床応用を目指した取り組みを強力に推進していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年においては、実施計画に基づいて遺伝子欠損マウスの作成に取り組み、当該マウスの作出に成功した。さらに、表現系解析についても順調に進行している。その結果、遺伝的なアトピー性皮膚炎モデルマウス(Jak1-Spadeマウス)において発症率の低下と炎症強度の顕著な減弱を認めた。さらに、薬剤塗布によるアトピー性皮膚炎モデルマウス(MC903塗布モデル)においても、耳介皮膚の肥厚減弱などの炎症緩和が認められた。以上より、実験動物資源の準備および表現型解析という初年度の目標を達したと判断したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年の遺伝子欠損マウスの表現型解析を行った際に、詳細な解析のための血清採取・組織の凍結保存も同時に行ったため、来年度はこれらの材料を用いて実験を進める予定である。さらに、ヒトのマルチモーダルデータのバイオインフォマティクス解析についても検証が完了したため、マウス-ヒト間のトランスレーションについても精力的に解析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症によって研究が実施できない時期が生じたため。すでにサンプリング済みのサンプルについての次世代シークエンス解析に充てる予定である。
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