研究実績の概要 |
血管内大細胞型B細胞性リンパ腫 (Intravascular large B-cell lymphoma, IVLBCL)は節外性リンパ腫の一型である。他のリンパ腫とは異なり腫瘤形成性に乏しく、血管内にのみ腫瘍細胞が存在するという特徴を有する。IVLBCLは腫瘤を形成しないため組織による確定診断が難しく、かつ予後の悪い腫瘍である。我々はIVLBCLの腫瘍細胞が血管内にとどまる理由がその細胞膜上の糖鎖構造の変化が原因ではないかという仮説を立て、IVLBCL腫瘍細胞上の糖鎖構造の変化を解析することにより、IVLBCLが血管外へ遊走できない機構を明らかにしたいと考えている。症例サンプルとしてIVLBCL6例と、同じ免疫形質を有するも腫瘤を形成するびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (Diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)15例を選定した。それぞれの症例のFFPE切片からレーザーマイクロダイセクション法で腫瘍部を単離し、糖タンパクを抽出した。その後にレクチンアレイ法でそれぞれの腫瘍の糖鎖プロファイルを解析した。その結果、IVLBCLで有意に高いレクチンを3種類 (LTL, BPL, ACA)、DLBCLで有意に高いレクチンを2種類 (HHL, WGA)見出した。次にIVLBCL20例、DLBCL15例に対してレクチン染色を行いスコアリングを行った。その結果、5つのレクチン染色ではいずれも染色像に有意な差はみられなかった。腫瘍内の組織球や赤血球に陽性となる傾向が強く、レクチンアレイの結果にも影響を及ぼしていると考えられた。唯一LTL染色ではDLBCLとの間に有意な差はみられなかったものの、一部のIVLBCLにおける腫瘍細胞にやや特異的に染まる傾向にあり、LTLで標識されるαFuc糖鎖がIVLBCLの腫瘍細胞上で発現が変化している可能性が示唆された。
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