研究課題/領域番号 |
20K16170
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
岩谷 舞 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70850361)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 腸炎関連癌 / SATB2 / Claudin 18 / 炎症性腸疾患 / 腺癌 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患を背景に、大腸粘膜の活動性炎症を原因とする大腸癌は腸炎関連大腸癌(Colitis associated colorectal carcinoma:CAC)と称されれており、散発性大腸癌(sporadic colorectal carcinoma: sporadic CRC)と比して非常に多彩な組織像を呈する事が知られている。またCACではsproadic と遺伝子学的に異なる変異を有する事が知られている。本研究の目的は、CACにおける組織形態学的所見と分子生物学的態度の相関を明らかとする事であり、以下の2点に焦点を当てた検討を行った。
①CACにおいて大腸マーカーであるSATB2が有意に低下する事を踏まえ、SATB2陰性CAC3例、SATB2陽性CAC3例を抽出してRNA-sequence(NGS)を施行し、遺伝子発現についての比較検討を行った。→SATB2陽性例とSATB2陰性例では有意に発現量の異なる複数の遺伝子が明らかとなり、SATB2陰転化例ではより散発性大腸癌と異なる発癌経路が示唆された。Pathway解析等を施行中である。
②CACの予後に関与する、ないし治療に寄与しうるバイオマーカーを検出し、組織学的所見との相関を見出す。→大腸におけるCACにおいて、Claudin18.2が有意に高発現し、胃・食道腺癌においてPhase 3治験施行中のClaudin 18.2抗体薬の治療対象となる事を明らかとした自身の検討を元に、早期発見が難しく、進行した状態で発見される頻度の高い小腸CACにおけるCladusin 18.2の発現を解析する必要があると考えた。→本邦では稀である腸炎関連小腸癌10与例を確保した。小腸CACについては世界的に見ても詳細な免疫組織学的検討が未だ成されておらず、Claudin18.2のみならず、更なるバイオマーカーの検出を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAシークエンス解析により、SATB2陽性CACとSATB2陰性CACでは明らかな遺伝子発現の差異がある事が明らかとなった。それらを解析し、SATB2陰転化の機序について迫れる可能性が高くなった。またバイオマーカーとして大腸CACにおいて治療の選択肢となり得るClaudin18.2の発現を明らかとした。Claudin18.2については大腸CACのみならず、小腸CACでも高発現である可能性があり、当初の研究計画に加え小腸CACでも検討を行う検討が必要と考えたが、検討に十分な症例数が整った為。
|
今後の研究の推進方策 |
RNAシークエンス解析にてSATB2陽性CACとSATB2陰性CACで発現の差異があった遺伝子が発癌に関与する経路を明らかとし、その機序について検討を行う。遺伝子変異やメチル化が示唆される場合、PCR等検査を追加して検討を行う。新たに加えた炎症性腸疾患関連小腸癌については、まずは免疫染色にてその組織学的詳細を明らかとする。またSATB2陰転化の機序にSATB2遺伝子自体のメチル化が関与している可能性についても定量的メチル化解析法であるMethylation Specific PCR(MSP)法等で解析を追加する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究発表及び情報収集の為に複数の国際学会に参加予定であったが、国外の学会参加が現状により困難であった為。今年度は状況に応じてではあるが、可能であれば国際学会に参加し、発表等を行う。 RNAシークエンス解析によって明らかとなった遺伝子発現についての検討を今年度行う事になった為。臨床応用可能な免疫染色で、炎症性腸疾患関連癌に対する新たなバイオマーカーの検討を行う為、複数の免疫染色抗体を購入予定である。
|