研究課題
未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma, UPS)は、特定の分化を示さない多形性の強い腫瘍細胞の増殖よりなる悪性軟部腫瘍である。軟部腫瘍のなかでの頻度は比較的高いが、除外診断による診断名であることから、様々な疾患の集合体であると考えられる。一方、皮膚に発生する異型線維黄色腫(atypical fibroxanthoma, AFX)は、組織像がUPSとほぼ同じであるが、切除のみで治癒が期待され、転移・再発が少ない。組織像が同じであっても、皮膚発生のAFXの方が軟部発生のUPSよりも予後が良いことが知られている。インフラマソームは、細胞傷害因子を認識する自然免疫のパターン認識受容体で、炎症性サイトカインの一つであるIL-1βの活性化に必須の細胞質内タンパク質複合体である。IL-1βは組織細胞傷害に対する生体の防御的な修復反応に関与するだけでなく、腫瘍増殖、腫瘍抑制、細胞死の誘導に働く。また発現している腫瘍の周囲の微小環境にも影響を与えていると考えられている。本研究では、腫瘍への免疫応答や腫瘍微小環境の両方に影響を与えるインフラマソームあるいは炎症性サイトカインが、軟部腫瘍の予後にどのように関わっているかを免疫組織化学的かつ遺伝子レベルの解析によって明らかにする予定である。形態学的に区別困難な症例のなかから、予後の良い群と悪い群に選別する新たな診断基準の確立を目指し、現在種々の抗体を用いて免疫染色を実施、検討中である。
3: やや遅れている
対象症例を抽出し、種々の免疫染色を検討中である。しかしながら肉腫は希少がんであり、予想したよりも症例数が十分に集まっていない。
症例数の不足については、さらに過去の症例に遡って対象とする予定である。また他の骨軟部腫瘍についても対象を広げる予定である。
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