研究課題/領域番号 |
20K16173
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
福島 万奈 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (70546225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症 / 軟部腫瘍 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma, UPS)は、特定の分化を示さない多形性の強い腫瘍細胞の増殖よりなる悪性腫瘍である。軟部腫瘍のなかでの頻度は比較的高いが、除外診断による診断名であることから、様々な疾患の集合体であると考えられている。 インフラマソームは、細胞障害因子を認識する自然免疫のパターン認識受容体である。ミトコンドリア上のASCと小胞体上のNLRP3が結合することによりNLRP3インフラマソームを形成し、炎症性サイトカインの一つであるIL-1βの活性化に働く。IL-1βは組織細胞傷害に対する生体の防御的な修復反応に関与するだけでなく、腫瘍増殖、腫瘍抑制、細胞死の誘導に働く。また発現している腫瘍周囲の微小環境にも影響を与えていると考えられている。 腫瘍への免疫応答や腫瘍微小環境の両方に影響を与えるインフラマソームが、軟部腫瘍においてどのようにかかわっているかを明らかにするため、ASCおよびNLRP3の免疫染色を網羅的に行った。その結果、ASCは種々の腫瘍細胞に広く発現を認めたが、NLRP3を発現している腫瘍は結節性筋膜炎、腱鞘巨細胞腫、UPSなど限られていた。このうち良性腫瘍の結節性筋膜炎および腱鞘巨細胞腫ではASCとNLRP3が同時に発現しており、正常な炎症応答が起こっていると考えられた。一方悪性腫瘍のUPSでは、間質に浸潤するリンパ球や組織球にASC発現を認めるものの腫瘍細胞の多くはASC陰性または減弱する傾向がみられ、NLRP3インフラマソームの形成およびNLRP3を介した炎症反応答が阻害されている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肉腫は希少がんであるため症例数が十分に集まらず、当初の研究計画を変更したためやや遅れていると判断した。しかし、計画変更後はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織化学的解析を行ったのち、ホルマリン固定パラフィン切片を用いてmRNAを抽出し、ASC, NLRP3, IL-1βなどの各種インフラマソーム関連物質の発現を遺伝子学的に確認する予定である。
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