研究課題
未分化多形肉腫(UPS)は,多形腫瘍細胞の増殖よりなる予後不良な悪性軟部腫瘍である.UPSに組織像が類似する疾患として,皮膚に発生する異型線維黄色腫(AFX)がある.AFXは切除のみで治癒が期待され,軟部発生のUPSよりも予後が良い.UPSとAFXは組織像が類似しているにもかかわらず,予後が異なる原因は未解明である.近年,腫瘍におけるNLRP3インフラマソームの関与が注目されている.インフラマソームとは,細胞傷害因子を認識する自然免疫のパターン認識受容体であり,炎症性サイトカインであるIL-1βやIL-18の産生を制御する.NLRP3インフラマソームは2段階のプロセスで活性化され,第1段階ではNF-kBの活性化が関与し,第2段階では多様な細胞傷害因子を認識するとASC,NLRP3,Caspase-1が結合し,IL-1βやIL-18を産生する.一部の腫瘍においては腫瘍増殖を抑制する働きがあるとされるが,他の腫瘍モデルにおいては腫瘍微小環境に影響して腫瘍増殖を促進することもあるとされる.本研究では,腫瘍への免疫応答や腫瘍微小環境の両方に影響を与えるインフラマソームが,UPSとAFXにおいてどのように働いているかを明らかにするため,NF-kB,NLRP3, ASCの免疫染色を行い,腫瘍および腫瘍浸潤単核球それぞれの発現を比較した.その結果,UPSでは腫瘍細胞,腫瘍浸潤単核球いずれもNLRP3の発現がAFXよりも有意に増強しており,また腫瘍浸潤単核球におけるASCの発現も増強していた.すなわちUPSではAFXに比べNLRP3インフラマソームが活性化した状態にあり,UPSにおいてNLRP3インフラマソームは腫瘍増殖に働いていると考えられた.またUPS, AFXのすべての症例でNF-kBの発現を認め,NLRP3インフラマソームにNF-kBの活性化が関与していると考えられた.
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