研究課題/領域番号 |
20K16183
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
赤木 明生 愛知医科大学, 付置研究所, 助教 (10804239)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プリオン病 / プリオン仮説 / 非中枢神経組織 |
研究実績の概要 |
プリオン病では、発症早期から大脳皮質全体にびまん性に異常プリオン蛋白質(PrP)が沈着している。異常PrPの伝播様式の解明のためには、非中枢神経組織に着目する必要がある。臨床、病理学的にプリオン病と確定診断された多数のヒト剖検組織で、異常PrPの伝播に着目して、非中枢神経組織の異常PrPの有無と局在を網羅的に解析した報告はない。我々は、非中枢神経組織であり、採取が容易であり、支配神経と被支配筋である、三叉神経節と側頭筋における異常PrPの有無と局在を検討し、異常PrPの伝播経路と様式の解明を目指している。 今年度は、これまでに標本を作成した18例(孤発性プリオン病13例、遺伝性プリオン病5例)の三叉神経節、三叉神経、側頭筋をそれぞれ解析した。ヘマトキシリンエオジン染色とクリューバー・バレラ染色による観察では、神経細胞脱落や髄鞘淡明化は認めない。しかし、一部の神経細胞体内に空胞形成を認める。側頭筋には異常を認めない。PrP免疫染色では、三叉神経節と側頭筋に異常PrP沈着は認められない。一方、三叉神経に異常PrP沈着を認める症例が孤発性プリオン病の中にあった。三叉神経に異常PrP沈着を認める症例と認めない症例の間で何が違うのか(例えば発症年齢や罹病期間など)は、現時点では不明である。遺伝性プリオン病では、これまでの解析で三叉神経に異常PrP沈着を認める症例はない。 今回の結果から、異常PrPが三叉神経線維を通じて、中枢神経組織から非中枢神経組織へ伝播している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまでに標本を作製した18例について解析を行った。そして、三叉神経線維に異常PrP沈着を認める症例があることを明らかにした。異常PrPが神経線維の中に存在するのか、外に存在するのかを明らかにするために、電子顕微鏡による超微形態の観察を進めている。併せて、これらの結果は、まず症例報告として発表するための準備を進めている。 そして今年度は7例の新規のプリオン病(孤発性プリオン病5例、遺伝性プリオン病2例)の剖検を行った。その全例で三叉神経節と側頭筋を採取した。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果から、異常PrPが三叉神経線維を通じて、中枢神経組織から非中枢神経組織へ伝播している可能性が示唆された。 今後は、第一にさらなる症例の蓄積を図っていく。今年度剖検を行った7例も加えて、30例前後の解析を目指す。第二に三叉神経節の凍結標本を用いたwestern blot解析を進めていく。第三に電子顕微鏡を用いた超微形態の観察を行っていく。第四にプリオン仮説を取る、アルツハイマー病やパーキンソン病で同様の検討を行う。 以上を踏まえて、三叉神経節と側頭筋における異常PrP沈着の分布、異常PrPの伝播経路と機序、他の神経変性疾患との対比の解明をそれぞれ進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、すでに作成されている標本の検討が主であった。そのため、次年度使用額が生じた。 今後は、新規に剖検を行った症例の標本を作製していくために標本作成費が必要である。また、電子顕微鏡による超微形態の観察、異常PrPのwestern blot解析を行っていく予定である。
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