研究課題
我々は、プリオン病における異常プリオン蛋白質(PrP)がどこから、どのように広がっているのかを解明するために、特に非中枢神経組織であり、支配神経と被支配筋である三叉神経節と側頭筋におけるPrPの有無と局在を検討している。今年度は、プリオン病3例の剖検を行った。全症例で、三叉神経節、三叉神経、側頭筋を解析した。ヘマトキシリンエオジン染色とクリューバー・バレラ染色による観察では、神経細胞脱落や髄鞘淡明化は認めない。側頭筋には異常を認めない。PrP免疫染色では三叉神経に異常PrP沈着を認めた症例が1例あった。異常PrP沈着は神経線維に沿ったdot状の沈着である。一方で、側頭筋に異常PrP沈着を認めた症例はなかった。次に、プリオン病の電子顕微鏡解析を並行して行っている。三叉神経は検体が小さく試料作成に習熟が必要であるため、まずプリオン病の大脳皮質の電子顕微鏡解析を進めている。プリオン病の病理学的特徴の1つとして大脳皮質に空胞形成が見られることが挙げられる。一方で、この空胞形成の過程やその発生部位は明らかになっていない。これまでの電子顕微鏡解析によって、空胞内部にも細胞小器官の断片を疑う不定形の構造物があること、空胞がシナプスや神経細胞や軸索などの内部に形成されていることが示唆される結果を得ている。今年度は、光学顕微鏡による病理学的解析に加えて、電子顕微鏡を用いた病理学的解析をより加速して行く予定である。
3: やや遅れている
昨年度はプリオン病の剖検数が少なかった。ただ、昨年度までにすでに解析に必要な剖検数は確保できている。これまでに剖検した症例については、おおむね標本作製も終わっており、現在病理解析を進めている。プリオン病の電子顕微鏡による観察については、これまでに数例を行いおおむね良好な結果が得られている。今年度は得られた知見を論文として発表する準備を進めている。論文作成がやや遅れている。今年度中に発表できるように鋭意努力していく。
まず、三叉神経の異常PrP沈着の病理学的解析を進めていく。特に、異常PrP沈着を認める症例と認めない症例の差異に着目し解析していく。次に、三叉神経の電子顕微鏡解析を行いより詳細な検討を行う。さらに、プリオン病の大脳皮質の電子顕微鏡解析もより多くの症例、部位で行っていく。
プリオン病の剖検から標本作成まではおおむね1年程度を要する。そのため、剖検から標本作製までの期間にずれが生じる。今後、標本作成や電子顕微鏡による観察のための器具や消耗品の購入費が必要である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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