研究実績の概要 |
間質性肺炎合併肺腺癌の癌関連線維芽細胞(cancer associated fibroblast: CAF) に特異的なマーカーを探索すべく、間質性肺炎合併肺腺癌の(A)癌間質、(B)背景肺、(C)間質性肺炎非合併肺腺癌の癌間質、(D)間質性肺炎の線維芽細胞について、一般的に知られているCAFマーカー、αSMA, FAP, periostin, podoplanin の免疫組織学的解析を行った。(A)は(C)に比して、αSMAの発現率が低く、podoplaninの発現率が高かった。また(B)に比して、FAP, podoplaninの発現率が高かった。 また、(A)-(D)のFFPE検体を用い、癌細胞をLaser Microdissection法で取り除いてタンパクを抽出し、LC/MSによるショットガン定性プロテオーム解析を行った。1699種類のタンパクが特定され、うち、63種類が (A)のみに特定された。9種類のタンパク着目し、免疫組織学的解析を行ったところ、hyaluronan and proteoglycan link protein 1 と aggrecan core protein について、(A)における発現亢進が認められた。次に、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、正常な成人肺に由来する線維芽細胞と、腺癌細胞の共培養を1週間行い、線維芽細胞のセルブロックを作製した。免疫組織学的解析では、一般的なCAFマーカーの発現に変化が認められたが、これら2種類のタンパクの発現亢進は認められなかった。したがって、癌細胞と線維芽細胞の相互作用のみによって発現が誘導されるのではなく、より複雑な過程を経ることで発現亢進がもたらされると推測された。 今後、間質性肺炎によって蓄積した細胞外基質による癌の発生や進行や、CAFを含めた癌微小環境への影響等の解明に寄与する研究へ発展と発展させたい。
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