WHO分類改訂に伴い、グリオーマの診断では形態学的分類に遺伝学的分類を取り入れた統合診断を行うこととなったが、遺伝学的検索をすべての医療機関で行うことは困難である。一方、従来行われてきた形態学的分類では、診断者間で組織分類にばらつきが生じるという問題点が指摘されてきた。その一因として、グリオーマの形態学的多様性および組織特異的マーカーの欠如が考えられる。本研究の目的はグリアの発生、分化に関与する転写因子の発現に基づいて、グリオーマ組織をグリアの分化段階に準じて階層化し、いずれの発生時期の細胞がグリオーマの発生母細胞となりえるのかを追究し、発生母細胞と推定されるグリア前駆細胞の性質から、各組織型に特異性の高いマーカーを確立し、グリオーマの形態学的診断の精度を向上させることである。 現在、抽出した対象症例に対してIDH1 R132H変異抗体およびSOX9、SOX10およびNFIAそれぞれを組み合わせた2重染色を実施した段階である。これらの発現結果を解析しマーカー発現様式に基づいてアストロサイト系、オリゴデンドログリア系など各系統に分類する。 さらに分類したグリオーマ細胞に対して、オリゴデンドロサイト系譜ではOPCマーカー(NG2/CSPG4、PDGFRα、Olig2)や成熟オリゴデンドロサイトマーカー(MBP)を、アストロサイト系譜ではアストロサイトのマーカー(GFAP)を追加染色することで、各系統に分類されたグリオーマ細胞の分化成熟段階をより詳細に検討していく。
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