浸潤性粘液腺癌と浸潤性非粘液性腺癌を比較する目的で、根治的外科切除を受けた原発性肺腺癌(浸潤性粘液腺癌と浸潤性非粘液性腺癌を含む)142例のコホートを、まずは検討した。病理診断および臨床病理学的パラメータとの相関を解析した。生存データはlog-rank検定を用いて解析された。これらの病理画像のムチン産生についての免疫染色を詳しく観察すると、病理組織学的にムチン産生が確認された症例は30例で確認された。それらを、2つのタイプに分類した: A型(細胞質と気腔の両方にムチンが存在;n=6)とB型(主に気腔にムチンが存在;n=24)である。A型症例は一貫して浸潤性粘液性腺癌と診断され、HNF4a陽性であった。一方、B型症例は浸潤性非粘液性腺癌に近く、TTF-1陽性であった。B型24例のうち、浸潤性粘液腺がんと診断されたのは1例のみであった。ムチンの存在は生存期間、性別、喫煙歴、リンパ節転移と有意な相関を示さなかった。しかしながら、ムチン陽性症例はSpread Through Air Spaces(STAS)の存在と有意な相関を示した(P=0.046)。特に、我々の研究におけるSTASを伴う肺腺がんは予後不良であった(P=0.018)。我々は、TTF-1とHNF4aの養成増における分類を構築しようとしていたが、いずれの形態の中でも特にムチン産生がSTASとの関連を強く示唆する結論であった。STASは予後増悪因子の一つと考えられており、今度はムチン産生の有無について形態学だけでなく、免疫組織学や遺伝子に変異についての研究が期待される。また、我々は浸潤性粘液腺癌の遺伝子発現についても検討した。過去の研究より浸潤性粘液腺癌は通常の浸潤性非粘液腺癌の腺癌からの化生もしくは、化生上皮からの癌と考えられる、同部位の解析中であり、別途成果を発表する予定である。
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