研究課題/領域番号 |
20K16196
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高澤 久美 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50359709)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LSR / cell adhesion |
研究実績の概要 |
脂質分解刺激に応じて機能するリポタンパク質受容体として当初同定されたlipolysis-stimulated lipoprotein receptor(以下、LSR)は、後年、細胞間接着装置の一つであるタイト結合に局在するタンパク質として再発見された。LSRは脂質代謝と細胞間接着という、一見独立した二つの機能を合わせ持つユニークなタンパク質であることが明らかとなった。我々は、子宮頸部腺がんにおけるタイト結合関連タンパク質の発現解析を行う中で、LSRが腫瘍領域で異常発現することを見出した。さらに、細胞株を用いた実験で、LSRの発現変動が、細胞間接着装置に影響を及ぼすと同時に、脂質代謝を変動させる可能性を見出した。本研究では、腫瘍で高発現するLSRが癌悪性化の過程でどのような役割を果たしているかを、とくに脂質代謝を含む癌代謝リプログラミングと細胞接着に着目して、明らかにすることとした。 これまでに、子宮頸部腺がん、乳がん手術材料に対して、抗LSR抗体を用いて免疫組織化学を行い、その染色態度を評価した。その結果、非腫瘍性の頸管腺上皮、乳管上皮と比較して、それぞれのがん成分においてLSRの発現態度には有意な差が認められた。LSRの発現欠損株と対照となる細胞株で比較プロテオーム解析を行ったところ、細胞間接着に関連する遺伝子オントロジー(GO) termが複数検出された。乳がんの複数の細胞株を用いてLSRの発現解析を行ったところ、複数の薬剤曝露によりLSRの発現が増加することを確認した。現在、薬剤刺激により活性化され、LSRの発現調節を行っているシグナル経路の探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頸部腺がん手術材料、乳がん手術材料を用いた抗LSR抗体による免疫組織化学的検討では、非腫瘍性上皮と比較してがん組織でLSRの発現態度に有意な差が認められ、良好な結果を得られた。CRISPR-cas9システムを用いてLSRの発現欠損細胞株を作製し、コントロール細胞との比較プロテオーム解析を実施したところ、3000個程度のタンパク質を同定することができた。有意に発現変化しているタンパク質について遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析を実施したところ、細胞間接着に関連するGOtermが複数検出された。また、RNAseqを実施したところ、コントロール細胞と比較して有意に発現低下している遺伝子が800個程度同定され、トランスクリプトーム解析においてもGO解析で細胞間接着に関連するGOtermが複数エンリッチされていることが明らかとなった。これらの発現変動をふまえて、さらに細胞生物学的な解析を進めたところ、LSR発現欠損細胞株では、コントロール細胞と比較して細胞接着機能が低下していることが明らかとなった。乳がん細胞株を用いた検討では、複数の薬剤曝露でLSRの発現が増加することが確認され、現在はシグナル経路の解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
LSR発現と病理組織学的因子及び予後との相関について検討を行う。LSR発現欠損株にLSR発現ベクターを導入し、LSR発現回復細胞株を樹立し、LSR発現に調節を受けるたんぱく質を網羅的に探る予定である。各細胞株に対してトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、リピドーム解析などの網羅的な解析を実施し、統合解析を実施する予定である。また、脂質などの細胞株への曝露によるLSRの発現変化を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症まん延の影響により、予定していた実験計画に遅れが生じた。コロナウイルス感染症の広がりを考慮しつつ、実験を行ったが、最終的に次年度使用額が生じることになった。次年度については、本年度実施できなかった実験を合わせて施行する予定である。
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