研究課題
令和2年度は、1999年~2010年までに群馬大学医学部附属病院にて診断報告された乳癌213症例のホルマリン固定・パラフィン包埋 (FFPE)ブロックを用いて、4種類のリン酸化STMN1 (Serine 16, Serine 25, Serine 38, Serine 63)それぞれの発現意義と予後、臨床病理学的因子、がん幹細胞マーカー発現、微小管作用型抗がん剤感受性との関連を免疫組織化学的手法で解析した。各種リン酸化STMN1高発現群は、低発現群と比較して以下のような特徴がみられた。・Serine 16:Ki-67 LI 低値、腫瘍径2cm≧、StageⅡ、低核異型度群に有意に多い。・Serine 25:高齢女性、ER低発現症例、PgR低発現症例、EGFR高発現症例、CK5/6高発現症例、E-cadherin低発現症例に有意に多い。・Serine 38:ER低発現症例、PgR低発現症例、HER2高発現症例、EGFR高発現症例、CK5/6高発現症例、Ki-67 LI 高値、静脈侵襲陽性例、高核異型度群、CD44+CD24-高発現症例、Vimentin高発現症例、E-cadherin低発現症例に有意に多い。・Serine 63:ER高発現症例、低核異型度群に有意に多い。以上の結果より、Serine 25, Serine 38は、細胞増殖活性が高い乳癌に多いことに加えて、E-cadherin低発現症例が多いことから、癌の悪性度、EMT (Epithelial to Mesenchymal Transition)との関連が示唆された。また、Serine 63は、ER高発現症例、低核異型度群が多いことから、ホルモン依存性乳癌との関連が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ホルマリン固定・パラフィン包埋 (FFPE)ブロックは、TMA (Tissue microarray)で作製し様々な研究で使用しているため、薄切による影響で症例数も当初の予定数から減少したが、令和2年度は、「1. TNBCを含む乳癌切除検体を用いたリン酸化STMN1発現解析:免疫組織化学的検討」について計画通り進めることができた。
令和3年度に、群馬医療福祉大学 医療技術学部の新校舎が完成した。今後、群馬大学 医学部と連携しながら、早急に実験環境を整え研究を継続していく。令和3年度の具体的計画内容は、免疫組織化学的検討のデータをまとめ、STMN1リン酸化酵素 (kinase)阻害剤のTNBC細胞株におけるSTMN1リン酸化statusに与える影響、治療効果、タキサン系抗がん剤増感効果を検証し、その作用メカニズムをin vitro, in vivo解析していく予定である。
【理由】当初予定していた細胞実験を用いた機能解析の検討に着手できず、それらに使用する試薬等の購入を見送ったことから予定額に残額が生じることとなった。【使用計画】本年度の差額分は次年度の細胞実験、動物実験での解析のための試薬や消耗品および試薬の購入に使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Oncology
巻: 99 ページ: 15~22
10.1159/000509033
British Journal of Cancer
巻: 123 ページ: 1145~1153
10.1038/s41416-020-0971-y
巻: 122 ページ: 1686~1694
10.1038/s41416-020-0820-z
巻: 122 ページ: 986~994
10.1038/s41416-020-0744-7