研究課題/領域番号 |
20K16201
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
犬飼 円 北里大学, 医学部, 助教 (10525695)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膠芽腫 / S100A4 / 血管新生 / 低酸素 / NMⅡ / VEGF |
研究実績の概要 |
現在、がん各種において転移・浸潤に関わると言われているS100A4に注目し、膠芽腫の病態解明の一手段として、低酸素誘導されたS100A4に注目し、「膠芽腫の壊死近傍は低酸素・血管微小環境 (ニッチ)で、S100A4/非筋細胞性ミオシン (NMⅡ)経路により誘導・活性化された腫瘍細胞が血管新生ソースとして腫瘍伸展に寄与する」という仮説をたて、S100A4陽性腫瘍細胞による血管新生の分子機構を証明していく。 手術検体にて、膠芽腫の地図状壊死周囲は、HIF-1α, CA9といった低酸素マーカーが陽性であり、低酸素状態であると考えられる。また、 S100A4, MNⅡ, VEGF mRNA発現が高かった。そしてその外側は、CD34陽性血管が目立ち 血管増生が盛んであることが分かった。血管壁とその周囲の一部の腫瘍細胞には、S100A4発現がみられた。 培養膠芽腫細胞では、免疫沈降により、S100A4はNMⅡと結合し、NMⅡの機能を抑制することが分かった。S100A4存在下では細胞移動能が上がった。S100A4がNMⅡに結合することで NMⅡの機能を抑制すると考えられた。 よって、地図状壊死周囲ではVEGF存在下で、既存の血管を足場にして、S100A4がNMⅡを抑制することで腫瘍自体が遊走し、新たな血管を新生していくのではないかと仮定した。 免疫染色 S100A4陽性腫瘍では、全生存期間・無増悪期間ともに短かかった。S100A4による血管新生が直接的・間接的に、腫瘍の悪性度に関わるのではないかと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調であるも、まだ結論を詰めるところまではいけていない。 研究が思う様に進まなかった際は、立ち止まり、自身の時間・予算に見合った研究をすべく方針転換を図る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
地図状壊死周囲ではVEGF存在下で、既存の血管を足場にして、S100A4がNMⅡを抑制することで腫瘍自体が遊走し、新たな血管を新生していくのではないかと仮定した。 実際に、S100A4陽性腫瘍細胞が遊走して血管を形成していく様を、蛍光染色や免疫多重染色等で検証していく必要がある。 免疫染色 S100A4陽性腫瘍では、全生存期間・無増悪期間ともに短かかった。現時点では、S100A4による血管新生が、直接的・間接的に、腫瘍の悪性度に関わるのではないかと考えているが、実際にどのように関わっているのか、血管新生以外の観点からも検証していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りであるも、研究がまだ途中であるため。 地図状壊死周囲ではVEGF存在下で、既存の血管を足場にして、S100A4がNMⅡを抑制することで腫瘍自体が遊走し、新たな血管を新生していくのではないかと仮定した。 実際に、S100A4陽性腫瘍細胞が遊走して血管を形成していく様を、蛍光染色や免疫多重染色等で検証していく必要がある。可能であれば、膠芽腫培養細胞で経時的にとらえていけるようにしていきたい。 免疫染色 S100A4陽性腫瘍では、全生存期間・無増悪期間ともに短かかった。現時点では、S100A4による血管新生が、直接的・間接的に、腫瘍の悪性度に関わるのではないかと考えているが、実際にどのように関わっているのか、血管新生以外の観点からも検証していく必要がある。そのためには、全生存期間・無増悪期間の短かった臨床検体で、血管新生以外の因子が存在しうるか、免疫染色も含めて再度確認していく。
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