現在、がん各種において転移・浸潤に関わると言われているS100A4に注目し、膠芽腫の病態解明の一手段として、低酸素誘導されたS100A4に注目し、「膠芽腫の壊死近傍は低酸素・血管微小環境 (ニッチ)で、S100A4/非筋細胞性ミオシン (NMⅡ)経路により誘導・活性化された腫瘍細胞が、血管新生ソースとして腫瘍伸展に寄与する」という仮説をたてた。 膠芽腫手術検体より、地図状壊死周囲は免疫染色にて、低酸素マーカーであるHypoxic induced factor (HIF)-1αが強発現しており、かつvascular endothelial growth factor (VEGF)の発現が高いことが分かった。地図状壊死の周囲からやや離れた箇所では、VEGFが低発現であり新生血管増生が目立った。蛍光多重染色にて、血管壁とその周囲の一部の腫瘍細胞にはS100A4発現がみられた。In situ proximity ligation assay (PLA)では、地図状壊死周囲において、S100A4とNMⅡの相互作用を確認できた。 培養細胞を用いた検証にて、S100A4はNMⅡと結合しNMⅡの機能を抑制することで、腫瘍細胞の遊走が促進されることが分かった。 よって、地図状壊死周囲は低酸素ニッチであり、S100A4がNMⅡを抑制することで腫瘍自体が遊走し、VEGF存在下で既存の血管を足場にして、更なる血管新生・浸潤に繋がると考える。
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