研究実績の概要 |
未分化肉腫・粘液線維肉腫について、臨床経過及び病理学的組織形態の詳細な評価を行い、それぞれの病理学的所見から予後と関連している項目を抽出した。腫瘍の周囲浸潤様式を3群に分類して評価すると、周囲組織に浸潤性に増生している群では腫瘍内の粘液腫状間質の割合が高い傾向がみられた。また、浸潤性増生を示す腫瘍では肉眼的な腫瘍径と顕微鏡的な腫瘍径の乖離が大きい傾向があることが分かった。評価した病理学的な所見の中で、粘液線維肉腫の病理学的特徴である粘液腫状間質、細胞密度、周囲組織浸潤様式に加えて核分裂数をスコア化して2群に分類することで、予後が有意に異なることを報告した。このスコア化は予後が比較的良好と言われている粘液線維肉腫の一つの鑑別点となると考えられる。未分化肉腫内にみられる、中央部が拡張し、辺縁部が急峻に複数分岐し、先端が鋭角となる血管を鎌状血管と定義した。この鎌状血管が多くみられた症例では血行性遠隔転移をした症例が有意に多く、予後不良な傾向がみられた。粘液線維肉腫のスコアが高い群(M)とスコアが低く鎌状血管が目立たない(US1)と、鎌状血管が多い(US2)の3群に分類すると、予後との関連性が得られた。それらの症例の中から凍結組織が得られていた24症例のRNAシーケンスを行い、主成分分析を行うとそれぞれの群でまとまりがみられた。また、階層型クラスター解析を行うと、US2, SMARCA2発現を伴うUS1, SMARCB1発現を伴うUS1とM+US1群の4群に分類された。 鑑別が不明瞭な未分化肉腫と粘液線維肉腫の組織所見を再検討し、それらをスコア化することで予後との関連性を見出すことができ、血行性転移と関連性のある鎌状血管を評価して分類すると、RNAシーケンスを用いた分析でもグループ分けすることができたことを報告した。
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