【項目3:ウイルス侵入における膜形態形成の分子機構解明】 研究遂行の過程で、インフルエンザウイルスの宿主受容体の候補因子を新たに見出した。蛍光標識インフルエンザウイルスが候補因子ノックダウン細胞の細胞膜に吸着してからエンドサイトーシスにより内部に取り込まれる過程を、高速原子間力顕微鏡とレーザー共焦点顕微鏡を組み合わせたハイブリッド顕微鏡により可視化解析した。結果、候補因子のノックダウン細胞では通常の細胞よりも細胞膜上でのウイルス粒子の側方拡散係数が高かった。加えて、ノックダウン細胞での取り込み効率はコントロール細胞と比べ有意に低かった。これらのことは、ウイルスが候補因子を介して宿主細胞に吸着しており、因子が取り込みにおいて重要であること、つまり因子が受容体であることを示唆する。取り込み過程におけるウイルスとエンドサイトーシス関連タンパク質(クラスリン、Arf6など)の共局在を検証した結果、取り込みの様式はクラスリン依存性エンドサイトーシスでことが明らかとなった。興味深いことに、エンドサイトーシスの終盤に、片側から隆起した膜の構造体がウイルスを覆い細胞内部へと取り込む様子が頻繁に観察された。各種阻害薬を用いた実験から膜隆起の形成にはコータクチンとArpp2/3複合体が関与することを示した。これらの結果はウイルス感染の超初期過程における膜形態形成と宿主因子の関係性を明らかにする上で重要な知見である。
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