研究課題/領域番号 |
20K16214
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
浅野 達雄 東京女子医科大学, 医学部, 博士研究員 (60708080)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん転移 / リンパ節ストローマ細胞 |
研究実績の概要 |
近年、所属リンパ節へのがん転移が起点となって遠隔転移が起きることが報告されているため、我々はリンパ節転移の機序解明を目指した。前転移状態においてはリンパ節細網線維芽細胞(FRC)に発現しているIL-7やCcl21といったサイトカインが減少することでT細胞B細胞の抗腫瘍活性を低下させることが報告されている。我々はFRCのサブセットのうちリンパ節濾胞の最外層に局在し辺縁洞を裏打ちする辺縁細網細胞(MRC)に着目した。MRCはRANKL-RANK signalingを介してリンパ管内皮細胞(LEC)と協調し被膜下洞マクロ ファージ(SSM)の分化と維持に必要であることが報告されている。SSMはリンパ液由来の病原体抗原への免疫反応の最前線であるとともに、抗腫瘍性の免疫反応も促進することが報告されている。これらの報告より、我々は所属リンパ節においてはSSM-MRC-LECで形成される微小環境 (SSM-MRC-LEC Niche)に変化があり転移が促されると仮説をたて研究計画を立案し検証した。定常状態・前転移状態・転移後におけるMRCの遺伝子変化をRNA-seqによって解析しリンパ節転移前後における遺伝子変化の網羅的解析を行った。その結果、転移前後における特徴的な遺伝子発現変化を認めた。この遺伝子変化に着目し遺伝子欠損マウスの作製を計画した。しかし候補遺伝子によってはCre/loxpシステムによるConditional knockout miceを作製しても、リンパ節欠損の表現系があり転移実験の評価が困難であることが判明した。また候補遺伝子が多数ある状況では、全てを遺伝子改変マウスを用いて評価するには費用・期間の面で困難である。そこで、次の段階として候補遺伝子のスクリーニングにウイルスによるリンパ節への遺伝子導入を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に確立したマウスメラノーマ細胞のリンパ節転移モデルの解析を進めた。本年度は定常状態・前転移状態・転移後におけるMRCの遺伝子変化をRNA-seqによって解析しリンパ節転移前後における遺伝子変化の網羅的解析を行った。その結果、転移前後における特徴的な遺伝子発現変化を認めた。この遺伝子変化に着目し遺伝子欠損マウスの作製を計画した。しかし候補遺伝子によってはCre/loxpシステムによるConditional knockout miceを作製しても、リンパ節欠損の表現系があり転移実験の評価が困難であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
候補遺伝子が多数ある状況では、全てを遺伝子改変マウスを用いて評価するには費用・期間の面で困難である。そこで、次の段階として候補遺伝子のスクリーニングにウイルスによるリンパ節への遺伝子導入を計画している。リンパ節ストローマ細胞へのin vivoにおける遺伝子導入は報告が乏しいため、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスといった3種類のウイルスで予備実験を行い効率的な遺伝子導入方法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、定常状態・前転移状態・転移後におけるMRCの遺伝子変化をRNA-seqによって解析しリンパ節転移前後における遺伝子変化の網羅的解析を行った。その結果、転移前後における特徴的な遺伝子発現変化を認めた。この遺伝子変化に着目し遺伝子欠損マウスの作製を計画した。しかし候補遺伝子によってはCre/loxpシステムによるConditional knockout miceを作製しても、リンパ節欠損の表現系があり転移実験の評価が困難であることが判明した。また候補遺伝子が多数ある状況では、全てを遺伝子改変マウスを用いて評価するには費用・期間の面で困難である。そこで、次年度には候補遺伝子のスクリーニングにウイルスによるリンパ節への遺伝子導入を計画している。過去にリンパ節ストローマ細胞に対するin vivoでの遺伝子導入の報告は乏しいため、ウイルス種類の検証や投与方法の検証が必要である。
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