研究課題/領域番号 |
20K16215
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮原 大貴 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (90823287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AApoAIIアミロイドーシス / プロテオーム解析 / 老化研究 |
研究実績の概要 |
AApoAIIアミロイドーシスは、血清高密度リポ蛋白質(HDL)のアポリポ蛋白質A-II(ApoA-II)がアミロイドとして全身組織に沈着する疾患である。令和2年度は、①マウス実験における標準系統のC57BL/6Jマウスにおいて、28週齢から86週齢でAApoAIIアミロイドーシスの自然発症の頻度を検証、②組織ごとのアミロイド線維分画についてプロテオーム解析を行いインタラクトームを同定した。 その結果、実験マウスの42週齢以降の全ての個体がAApoAIIアミロイドーシスを自然発症し、心筋細胞や腎臓の糸球体に重度の沈着と組織変性が観察された。これらのAApoAII沈着には免疫組織学的にアポリポ蛋白質群(E, A-I, A-IV)や血清アミロイドPがインタラクトームとして共沈着することが認められた。アミロイド線維分画の定量的な質量分析により、ApoA-IIのC末端領域(67-78)が他の領域の100倍程度も存在し、この領域がアミロイド線維形成過程に関与することが示唆された。 また、計画当初では想定されていなかったが、C57BL/6Jマウスが32週齢という老化現象が生じる前の中齢の段階からAApoAII沈着が認められた。この結果は、マウスを用いた老化研究やアミロイドーシス研究において解析データに自然発症によるAApoAII沈着の影響が意図せず含まれることを意味する。特に、重篤な沈着が認められた腎臓や心臓では機能低下が懸念されることから、老化研究などに対する重要な情報基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C57BL/6JマウスのAApoAIIアミロイドーシス発症が予想より早期から開始されたことにより実験群全体の見直しが生じたため
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今後の研究の推進方策 |
計画にしたがって、アミロイド沈着の位置情報を病理組織学的に分類する。その後、微小領域に沿って高精度レーザーダイセクション装置を用いてアミロイド試料を単離し、プロテオーム解析により各アミロイド領域ごとのインタラクトーム成分の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で国際学会(The XVII International Symposium of Amyloidosis)がウェブ開催となり旅費の支出が無かったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて研究成果投稿料として使用する予定である。
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