研究実績の概要 |
本研究はほぼ全てのアミロイドーシス病型で共通してアミロイドと共沈着するタンパク質群の存在に着目し、アミロイドーシス病態の分子基盤を明らかとすることを目的としている。2022年度は実験飼育下のマウスが加齢に伴い自然発症する加齢性アミロイドーシスをモデルに、複数の臓器におけるアミロイド共沈タンパク質の網羅的解析と関連病態の解析を実施した。ジャクソン・ラボラトリー・ジャパンから導入した標準系統C57BL/6Jマウスでは40週齢以降の全ての個体がAApoAIIアミロイドーシスを自然発症し、80週齢以降は心臓や腎糸球体に高度な沈着が認められた。レーザーダイセクション法により組織切片上から採取したアミロイドサンプルのLC-MS/MS解析で、アポリポ蛋白質群(A-I, A-IV, E)やクラステリン、vitronectinが肺胞毛細血管周囲、心筋間質、小腸の粘膜下、腎糸球体のいずれのアミロイドからも同定された。糸球体では補体系や免疫グロブリンが特異的に同定され免疫複合体の沈着が示唆された。 発症個体から抽出したAApoAIIを若い個体に尾静脈注射で投与することで病態誘発を行い、40週齢の時点で自然発症群の86週齢に相当する病態を再現した。誘発群の糸球体では免疫グロブリンなどが沈着し高齢マウスと同等の腎機能障害が観察され、高齢マウスにおける腎機能低下や糸球体病変はアミロイド沈着が原因の一部であることが示された。メサンギウム細胞の初代培養系でAApoAIIによる糸球体障害メカニズムの解明に取り組んだが、期間内での達成には至らなかった。
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