研究課題/領域番号 |
20K16217
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
仲山 美沙子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00510306)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気道上皮 / 完全分化 / 新型コロナウイルス / インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの世界的パンデミックを受け、米国やヨーロッパからの実験関連製品の入手が著しく困難であったが、正常および疾患由来のヒト一次小気道上皮細胞を入手し、それらの増殖性の確認、また繰り返し実験に使用できるよう細胞ストックを作成した。 正常由来のヒト一次小気道上皮細胞を増殖させた後、気体-液体界面(air-liquid interface)で完全分化するまで4週間かけて培養し、有線毛単層立方上皮が形成されることを確認した。また、分化と共に経上皮的電気抵抗の上昇を認め、免疫染色で分化の指標となる線毛細胞を定量化した結果、全細胞数の80%程度を占めた。 この完全分化モデルに高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスを感染させ、増殖することを確認した。研究申請時はインフルエンザウイルスのみを用いる予定であったが、新型コロナウイルスによるパンデミックを受け、その重症化メカニズムの解明が望まれる社会的状況を鑑み、新型コロナウイルスを用いた感染実験も行った。その結果、管腔側の細胞洗浄液に感染性ウイルスが含まれることを確認した。本研究で用いる気道上皮完全分化モデルがインフルエンザウイルスのみならず、新型コロナウイルスの研究にも有用であることが分かった。 完全分化モデルの作成に必須であるインサート付きプレートが入手困難であるが、代替品の検討を進めると共に、新型コロナウイルスを用いた研究結果が既に多く発表されているので、データベースを活用し、効率的に実験を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックを受け、米国やヨーロッパから輸入される実験に不可欠な消耗品や試薬の入手が困難であった。生産体制の遅延、航空便/船便の減便のみならず、気道上皮やオルガノイドを用いたコロナウイルス関連の研究が増えたことによる需要過多が生じており、状況が改善する見込みはまだ得られていない。air-liquid interfaceを作成するために必須であるインサート付きプレートは予定していた実験に必要な数が得られなかった。現在、代替品を用いて同様の完全分化モデルが作成可能かどうか検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
気道上皮の完全分化モデルを作成するために必須であるインサートの代替品/再利用を検討し、良好な結果が得られない場合は、分化前の細胞を用いて正常と疾患の比較を行う。また、公表されている肺や気道上皮のシングルセル解析のデータベースを活用することで、分化細胞におけるウイルス受容体の発現や感染で変動する遺伝子の発現を検討する。
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