研究課題/領域番号 |
20K16219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石橋 理基 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (20778279)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝臓傷害・再生 / 肝細胞極性 / CRISPR-Cas9 / 遺伝子ノックイン |
研究実績の概要 |
四塩化炭素投与による肝障害・再生時におけるNF-kBファミリー転写因子c-Rel、および細胞極性制御因子mInscの遺伝子発現量の変化を経時的に確認したところ、それらの発現量に有意な変化は認められなかった。また、c-Rel BS⊿マウスにおける肝臓傷害、修復、および肝細胞の脂肪滴蓄積の程度についても野生型マウスと比較を行ったが有意な差は認められなかった。また定常状態において、mInscと相互作用することが知られている細胞極性因子Par-3、および肝細胞の細胞極性規定因子DppIVの局在についても解析を実施したが、有意な差は認められなかった。今後、AAVベクターによるc-RelおよびmInscノックダウンマウスを用いた解析を進める。 マウス生体肝臓におけるmInscの局在、および相互作用因子を明らかにすることを目指し、mInsc遺伝子座の開始コドン直上に3xFlag-EGFP配列をノックインした3xFlag-EGFP-mInsc KIマウス作出を試みた。本マウスの作出には、CRISPR-Cas9システムによる効率的なKI個体の作製を行うため人工CRISPR-Cas9切断配列をマルチクローニングサイトの両端に搭載した高汎用型ドナープラスミド(pCriMGET)システムを新たに開発し、mInsc遺伝子座の開始コドン直上に3xFlag-EGFP配列をノックインした3xFlag-EGFP-mInsc KIマウスの獲得に成功した。また、クッパー細胞について解析を進めるために、Clec4F-Cre-tdTomato/ROSA26iDTRマウスの獲得に加え、pCriMGETシステムによりClec4F-hDTR-2A-EGFP KIマウス、およびClec4F-CreERT2 KIマウスの樹立に成功し、ジフテリアトキシン毒素投与によりクッパー細胞を特異的に除去できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓傷害からの再生時において、c-RelおよびmInsc遺伝子発現に有意な変動が見られないことが確認された。また、c-Rel BS⊿マウスの定常状態において細胞極性因子Par-3や細胞極性規定因子DppIVの局在についても野生型マウスと比較して有意な変化は見られないことを確認した。 解析を進める上で必要な新規ノックインマウスを短期間で効率的に作出可能なpCriMGETシステムを開発し、3xFlag-EGFP-mInsc KI、Clec4F-hDTR-2A-EGFP KI、およびClec4F-CreERT2 KIマウスの樹立に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓傷害からの再生機構については、四塩化炭素投与モデルだけではなく部分肝切除モデルについてもc-Rel/mInsc axisとの関係性の解析を進める。また、AAVベクターによるc-RelおよびmInscノックダウンマウスを用いて、c-Rel/mInsc axisの生理学的機能の解析を進める。さらに、獲得した新規KIマウスを用いて、肝細胞におけるmInscの局在、および相互作用因子の探索を実施する。また、NF-kBシグナルを活性化するTNFαおよびIL-6の投与解析や、クッパー細胞の枯渇とc-Rel/mInsc axisの関係性についても解析を進める。
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