研究課題
線維化は、各組織共通に見られ、組織再生能に乏しい軟骨や腱・靭帯組織においては健常な組織修復を阻害するなど、慢性疾患の基礎病変となる。本研究は、糖代謝制御や線維化抑制作用が報告されているmicroRNA-26aの役割に着目し、miR-26a遺伝子改変マウスを用いて線維化機構の解明を目指す研究である。本年度は、8週齢野生型・およびmiR-26a KOマウスにコリン・メチオニン欠乏高脂肪食飼料(CDAHFD:Research diet社)を4、6、8、12週間給餌し、肝臓線維化モデルを作製し、解析を行った。肝臓マクロ写真、免疫組織学的解析を行い、NASスコア(NASH指標)による単純性脂肪肝と線維化進行を評価した。両群とも時間依存的に病態が進行したが野生型群、KO群において明確な病理学的な差は認められなかった。ブレオマイシン投与による肺線維症モデルを作製したところ、miR-26a KOマウスにおいて線維化が抑制されていることが組織学的解析、ならびに組織中ヒドロキシプロリン量の解析から明らかとなった。さらにはmiR-26aの発現レベルは、病態進行過程において変動しなかった。これまでの結果は予想に反し、miR-26a全身欠損マウスにおける肝臓への線維化病変への影響が認められなかったことから、現在、あらたなモデル作製を進めるなど線維化進行過程でのmRNA、タンパクレベルでのmiR-26a予測標的遺伝子の発現レベルの解析を進めている。一方で、肺組織においては、miR-26aの存在がむしろ線維化を進行させている可能性を示すなど、これまでの実験結果を覆す結果が得られている。
3: やや遅れている
miR-26a過剰発現モデルやmiR-26a mimicの投与によって線維化が抑制されていることが報告されていることから、我々が作製したmiR-26aの全身欠損マウスでは各組織障害後の顕著な線維化進行が認められると予想した。しかしながら、現段階では予想に反し、miR-26a欠損による病態への関与は認められていない。そのため、当初予定していた網羅的な遺伝子解析を実施できていない。また、miR-26a欠損に起因する病態進行モデルが作製できておらず、miR-26a mimicを含むExosomeによる組織障害修復計画についても進めることができていないため、計画から遅れている状況となっている。現在、高脂肪食の長期負荷モデルや四塩化炭素(CCL4)投与による組織障害モデルの作製を行うなど、一部計画を変更しながら進めているところである。
解析項目、評価項目や方向性は現在と変更することなく、進めていく予定であるが、当初予定していたモデルに加えて、組織障害性の病変モデルも作製し、計画した実験を進めていく。さらに、網羅的なSequence解析を次年度に実施し、病態進行過程における遺伝子発現変化解析からmiR-26aの線維化への関与について詳細な検討を実施していきたい。
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Antioxidants
巻: 10 ページ: 419~419
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: ‐
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