線維化は、加齢性疾患や慢性炎症疾患において各組織共通に見られる病理学的所見である。組織再生能に乏しい軟骨や腱・靭帯組織においては健常な組織修復を阻害するなど、線維化発症機序の解明に基づく治療法の確立が求められる。 本研究では、糖代謝制御や線維化抑制作用が報告されているmicroRNA-26a(miRNA-26a)遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、ブレオマイシン投与による肺線維化モデルやコリン・メチオニン欠乏高脂肪食飼料(CDAHFD:Research diet社)を給餌した肝臓線維化モデルを作製し解析を行った。肝臓組織の病理学的解析の結果、野生型とKO群に顕著な差は認めなかった一方で、ブレオマイシン投与による肺線維症モデルでは、KOマウスにおいて線維化が有意に抑制されていることが組織学的解析、ならびに組織中ヒドロキシプロリン量の解析から明らかとなった。さらには、4塩化炭素(CCl4)を0.75 ml/kg or 2ml/kgの濃度で6週間経口投与し、薬剤誘発性肝臓線維化モデルを作製したが、食事誘発性モデル同様に野生型と比較して顕著な差は認めなかった。これらのことから予想に反し、miR-26aは肝臓組織において食事、または薬剤による炎症誘導性線維化機構に関与していないと考えられた。一方で、肺組織では顕著に線維化が抑制されたことから、miR-26aがむしろ線維化を進行させる可能性が示された。ブレオマイシン投与による肺組織でのmiR-26aの発現量に変化を認めなかったことから、線維化進行過程においてmiR-26aの発現量の増減ではなく、RNA Silencing ComplexであるAgo2などのRNA結合タンパク質との結合性やその下流での標的因子の発現や活性に影響を及ぼしていると考えられた。今後、肺組織の線維化進行に関わるmiR-26aの機能について詳細な検討を行う予定である。
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