研究課題
肝細胞は一般的な上皮細胞と異なり基底膜がない組織学的特徴を有する。したがって、基底膜に依存する単層平面的な形態でなく、肝細胞同士の接着によって肝細胞索構造を形成すると考えられ、この立体構造こそが肝細胞特異的機能の発揮に必要であると考えられる。2020年度に申請者は肝がん細胞株HepG2細胞に重層増殖タイプ(Pile-up型)と平面単層増殖タイプ(Flat型)が混在することに気付き、各々をクローニ ングしたところFlat型に比べPile up型の方がアルブミン合成能が顕著に高かった。2021年度はFlat型からPile-up型へと形態を変化させる化合物の探索を試みた。大阪大学 薬学部が有するFDA承認化合物1134種類の化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行った。ヒットした化合物は形態変化のみならず、HepG2細胞におけるアルブミン合成能を増強した。またマウスから単離した初代培養肝細胞に対しても同じ効果が見られた。そのメカニズムの一つとしてアルブミン発現に関わる転写因子の一つが増強が関与していることが示唆された。2022年度は「Flat type」と「ヒット化合物を添加したFlat type」との比較をRNA-seqで行い、どのようなpathwayが動いているのかを検証した。また培養法を 通常の接着培養ではなく浮遊培養で行うことでアルブミン産生能がより増強されることを見出した。このRNA-seqにおいても2021年度に見出していた転写因子の 増強が確認できた。したがって、このヒット化合物はアルブミン特異的転写因子発現の増強を介してアルブミンの発現を増加させていることが示唆された。2023年度は我々が開発したスクリーニングシステムを用いてアルブミン産生増強作用を有する機能性素材を探索し有望な植物抽出物2種を同定し、抽出技術を有する企業との共同研究契約を締結するに至った。
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