研究課題
ヒト奇形腫・胚細胞腫瘍の発症メカニズムをGANPの機能面から明らかにするために、CAG-ganp Tgマウスの解析とヒト胚細胞腫瘍の病理組織学的解析を行った。CAG-ganp Tgマウスの各臓器でのganp発現量を解析したところ、精巣>>脾臓・胸腺・卵巣に高発現しており、ganpは精巣腫瘍感受性が高いことが分かった。また、個体差があるものの、129/Sv系統よりも高頻度(2~3割の個体)に52週齢程度までに奇形腫が発生した。この奇形腫は雄では精巣に、雌では子宮正中部に発生するが、卵巣にはみられなかった。子宮に奇形腫が自然発生することは極めて稀であり、このことからCAG-ganp Tgマウスはmidline teratomaのマウスモデルであり、GANPは始原生殖細胞が卵黄嚢から後腸を経由して生殖隆起へ遊走する際に、性腺外の正中部に遊走異常を起こして胚細胞が迷入する過程に関わっていると考えられる。さらに、wild typeマウスでも、胎生14日の精巣原基や7週齢の精巣で精母細胞・精細胞にGANPが高発現しているが分かった。これらのことから、GANPはstemnessと密接に関係していることが予想された。また、ヒト精巣・縦隔に発生した正中奇形腫(midline teratoma)の症例を用いて解析したところ、奇形組織種によって多少の程度の差はあれGANPが過剰発現しており、特に表皮・毛嚢・気管支上皮で発現が強いことが分かった。これらの組織はヒト奇形腫で出現頻度が高いものであり、そのような組織ほどGANPが強発現していることから、これらの結果は、未知な部分が多いteratomagenesisのの解明に新たな知見を与えるものである。今後は、GANPを介した転写共役型DNA傷害(R-loop形成)の有無や頻度を確認するために、免疫組織化学的モニタリング解析を行う。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響で、研究に必要な備品の一部の納品が遅れているが、研究計画を著しく遅延させるような要素は今のところない。
コロナ禍の影響で、研究に必要な備品の一部の納品が遅れているが、解析準備が出来次第、GANPを介した転写共役型DNA傷害(R-loop形成)の有無や頻度を確認するために、免疫組織化学的モニタリング解析を行う。GANPの機能面からアプローチしたteratomagenesisのメカニズムの解明は、stemnessに関する新たな知見を与えるものであり、今後の再生医療の進歩のためにも非常に重要な成果であるため、現在 英語論文の投稿準備を進めている。また、論文への掲載の見込みが立ち次第、国内外での学会発表を予定している。
コロナ禍の影響で、本研究計画の遂行に必要な備品の一部の納品が次年度になったため。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
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