研究課題/領域番号 |
20K16231
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
津山 淳 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (20760101)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / ミクログリア / 神経修復 / エピゲノム解析 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
中枢神経に常在する免疫細胞であるミクログリアは、脳梗塞後に炎症性サイトカインを分泌するが、インスリン様成長因子などの神経栄養因子を放出し組織修復にも寄与することが知られている。しかしながら、修復性ミクログリアが脳組織内で誘導される機構および、どのように修復が終了されるのかは不明である。そこで、ミクログリアの修復機能を脳梗塞後に誘導および終了させている機構が解明できれば、修復機能の促進や修復期間の延長を目指した治療法の開発に繋がると思われる。 修復性ミクログリアの長期的な運命を追跡するため、Igf1の下流にCreERをノックインしたマウスを作製し、これをIgf1-EGFPトランスジェニックマウスおよびstop-flox-tdTomatoマウスと掛け合わせ、修復後ミクログリアの運命追跡実験を行った。その結果、修復遺伝子の発現を終えた後もミクログリアは長期に渡り脳梗塞巣周辺に存在していることを見出した。また、脳梗塞後に発現が上昇するミクログリアの修復関連遺伝子群に着目し、それらと相互作用する全エンハンサーを検出し、それらを制御する転写因子のスクリーニングを行うことで、修復関連遺伝子の発現誘導および発現消失を司ると思われる転写因子をそれぞれ同定した。同定した修復関連遺伝子抑制因子に対して阻害剤を開発し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、脳梗塞後の修復が持続・促進され神経機能予後を改善するという結果を得ることに成功していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的であった脳梗塞後ミクログリアの修復関連遺伝子群の制御を司る転写因子群を同定および修復性ミクログリアの運命を明らかにするができた。さらに同定した修復制御因子の阻害剤の開発を行い、その投与によって脳梗塞マウスの神経機能予後を改善することに成功した。当初の計画以上に新規治療法に直結しうる結果を得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今回見出した修復終了因子の機能解析と薬理的制御法に関して論文化を目指す。また、修復を終えたミクログリアの解析を進め、修復の延長・持続のみならず修復の再開を行うことが可能であるか否かの解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験が生じたため、予定していた論文投稿費が未使用となった。未使用額は次年度、研究発表や情報交換するため学会費に充てる予定。
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