前年度までに脳梗塞後の修復性ミクログリアにおいて修復機能を失わせる因子を同定し、その阻害剤を投与することによって脳梗塞後の神経機能予後を改善させることに成功した。本年度においては、開発した修復終了因子阻害剤により神経機能予後が改善する分子機構を明らかとするため、全脳細胞を用いた一細胞RNA-seqを行った。その結果、神経細胞、オリゴデンドロサイト、アストロサイトにおいて神経細胞の軸索伸長など神経修復に関与している遺伝子が有意に上昇していることが明らかとなった。すなわち、ミクログリアの修復機能が持続したことにより、脳梗塞後28日目であっても広範な脳細胞において修復状態が維持されていることが示唆された。 また脳梗塞慢性期である脳梗塞28日以降のマウスに修復終了因子阻害剤を投与したところ、再び機能回復を誘導することに成功した。このことから、本研究で開発した修復終了因子阻害剤は、機能回復を持続させるのみならず、機能回復を再開させる画期的な脳梗塞治療薬に繋がる可能性を示した。
|