研究課題/領域番号 |
20K16235
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
馬場 みなみ 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 研究員 (00814906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マラリア / RON4 / sporozoite / plasmodium / スポロゾイト / invasion / liver stage |
研究実績の概要 |
マラリア原虫は蚊の体内で発育し、哺乳類への感染型であるスポロゾイトとなる。スポロゾイトは自律的に蚊の唾液腺に侵入し、吸血とともに哺乳類体内に打ち込まれ、血流に乗って肝臓へと到達、肝細胞に感染する。本研究はスポロゾイトが、全く異なる種類の細胞に侵入・感染するためのメカニズムを明らかにするための足がかりとして、分泌型タンパク質RON4の各ステージにおける作用機序を明らかにすることを目的としている。 最初に作出済みであったスポロゾイト時期特異的RON4発現抑制原虫(RON4-cKD)を用いて、スポロゾイトの唾液腺への侵入にRON4が関与するかを調べた。RON4-cKD原虫吸血蚊では、唾液腺スポロゾイト数がコントロールの1/30程度まで減少していた。このことから、RON4はスポロゾイトの唾液腺感染に重要な役割を持つことがわかった。 さらにRON4がスポロゾイトの肝臓感染に機能するかを知るために、唾液腺由来のRON4-cKD及びコントロール原虫をマウスに静注し、42時間後の肝内原虫量を比較したところ、RON4-cKD接種群ではコントロールの1/20まで減少することがわかった。次にRON4がスポロゾイトの肝臓感染のどのステップに関与するかを明らかにするため、肝類洞の通過に必要な細胞通過、及び肝細胞への寄生の両ステップをin vitroで検証した。RON4-cKDスポロゾイトの細胞通過は、コントロールの1/7まで、肝細胞への寄生は1/10まで減少していた。このことから、RON4は肝類洞の通過と肝細胞への寄生、両方に重要な役割を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スポロゾイトの唾液腺侵入にRON4が関与することを明らかにしたため。加えてスポロゾイトの肝臓感染におけるRON4の作用時期の絞り込みが、in vitro・in vivoの両面からなされたため。
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今後の研究の推進方策 |
RON4の作用ステップが絞り込めたので、RON4C末端にmCherryを融合させたGFP発現原虫を用いて、スポロゾイトの唾液腺侵入及び肝臓感染時のRON4の局在の解析を行う。更に赤血球感染型であるメロゾイトにおいて、細胞侵入時にRON4と複合体を形成して機能すると言われているRON2、RON5についても局在の解析を行い、スポロゾイトにおいても協働しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により、国際学会の参加を見送ったため参加費が不要となった。加えて、参加した国内学会全てがオンライン・誌面発表となったため、旅費を使用しなかった。 また、新型コロナウイルス流行の影響で一部入手困難となった物品、試薬があり、当初の計画とは異なる順番で実験を行ったため。 次年度は、前年度に行えなかった実験も加えて行う。また学会が開催された場合は参加する。加えて研究成果をまとめて、論文投稿の費用として使用する。
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