研究課題/領域番号 |
20K16235
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
馬場 みなみ 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (00814906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マラリア / スポロゾイト / RON4 / 分泌 / 肝臓感染 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫は蚊の体内で発育し、哺乳類への感染型であるスポロゾイトとなる。スポロゾイトは能動的に蚊の唾液腺に侵入し、吸血とともに哺乳類皮内に打ち込まれ、血流に乗って肝臓へと到達、肝類洞壁を通過して肝細胞に感染する。本研究はスポロゾイトが、全く異なる種類の細胞に侵入・感染するためのメカニズムを明らかにするための足がかりとして、分泌型タンパク質RON4の各ステージにおける作用機序を明らかにすることを目的としている。 前年度はスポロゾイト時期特異的RON4発現抑制原虫を用いて、RON4はスポロゾイトの運動性、唾液腺への侵入及び肝実質到達に必要な細胞通過、肝細胞への寄生に関与していることを明らかにした。 次にこれらの段階の原虫がRON4を発現しているかを明らかにするため、RON4のC末端にmCherryを融合させた原虫及び抗RON4抗体を用いてRON4タンパク質の発現パターンを観察した。中腸スポロゾイトで虫体先端部にmCherryの蛍光が検出され、さらに唾液腺スポロゾイトでも同様の位置に蛍光が観察された。培養肝細胞HepG2へ接種後1時間では半数以上の原虫にRON4が観察されたが、接種後6時間では8割以上の原虫で検出限界以下となり、24時間の時点では全く観察されなくなった。その後、肝細胞内で赤血球感染型(メロゾイト)への分化・成熟に伴い、48から72時間でメロゾイト虫体先端部にRON4のシグナルが観察された。 RON4の発現を抑制することでスポロゾイトの運動性が大きく抑制されたため、運動の際にRON4は分泌されて機能するのか調べるため、スライドグラス上で滑走運動をさせたスポロゾイトを透過処理をせずに抗RON4抗体を用いて蛍光染色した。その結果、スポロゾイト体外にRON4シグナルが観察された。このことから、スポロゾイトは滑走運動中にRON4を分泌していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RON4発現抑制スポロゾイトで抑制されたスポロゾイトの運動性、唾液腺への侵入及び肝実質到達に必要な細胞通過及び肝細胞への寄生を行うと推測されるタイムポイントでRON4タンパク質が発現していることを明らかにした。RON4-mCherry原虫で、各タイムポイントでのRON4の分泌を観察しようとしたところ、夾雑物の蛍光との識別が困難であった。このため特異抗体を用いて、スポロゾイト体外のRON4の検出を試みたが、その条件検討に大幅な時間を取られたため。さらに新型コロナウイルス流行により、一部入手に遅延が生じた物品があったため。
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今後の研究の推進方策 |
スポロゾイトの滑走運動中にRON4が分泌されていることが示唆されたので、その他のタイムポイントにおいてもRON4が分泌されているかを明らかにする。更に赤血球感染型であるメロゾイトにおいて、細胞侵入時にRON4と複合体を形成して機能すると言われているRON2、RON5についても局在の解析を行い、スポロゾイトにおいても協働しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により、国際学会の参加を中止、またはオンライン参加としたため旅費が不要となった。加えて、参加した学会全てがオンライン開催となったため、旅費を使用しなかった。 また、新型コロナウイルス流行の影響で一部入手困難となった物品、試薬があり、実験の延長を余儀なくされた。 次年度は、前年度に行えなかった実験を行う。また学会が開催された場合は参加する。加えて研究成果をまとめて、論文投稿の費用として使用する。
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